コスタリカには太平洋側とカリブ海側の両方に美しい浜がある。カリブ海側は、バナナ農園から取れたバナナやコーヒー、カカオを輸出するために鉄道が敷かれ、いわゆる「バナナ・リパブリック(バナナ共和国)」として発展した。ジャマイカから住み着いた黒人労働者が多い。

プエルト ビエホ
今、ここ!

 カリブ海に面した港町、プエルトビエホはプエルトリモン県に属している。コスタリカの首都、サンホセで育った白人の良家の子息は、一般的に「プエルトリモンは危ないから行ってはだめ」と言われて育つらしい。

 そんな風評からか、コスタリカからパナマに抜ける際は、太平洋側のパソカナスという街から抜けるルートと、カリブ海側のプエルトビエホから抜けるルートがあるが、旅行代理店などは太平洋側のルートを推奨している。

 コスタリカのサンホセでも近年、治安は悪化しているというが、私が到着した時にプエルトビエホではつい先々週、ディスコで2人が撃ち殺されたという。

 しかし、プエルトビエホはのんびりとしたジャマイカ音楽があちらこちらで響き渡り、緊迫したという雰囲気は微塵も感じられない。

プエルトビエホの町並み

 コスタリカの首都、サンホセからバスで4時間。私はプエルトリモンに到着すると、早速、浜辺の景色を楽しむことにした。椰子の木々や原生林に覆われたパラソルのないビーチには様々な売り子が右に、左に行き来する。

 風体の怪しげな親父が「ガンジャブラウニー、ガンジャブラウニー」と叫びながら、目の前を通ったので、呼び止めた。親父は日差しに鏡のように反射し輝く銀紙に包まれた延べ棒を見せて「どうだ!?」と勧めるが、好奇心よりも、衛生面で問題がありそうなので遠慮した。笑顔の親父は前歯が数本抜け落ちていた。

売っていたのはマリファナ入りチョコレート

 一旦、宿に戻った後、夜、町を徘徊していると、日の丸の描かれた看板に「SUSHI御殿」という文字を発見した。メニューの値段を確かめると、サンホセの寿司屋の3分の1程度なので入ってみた。店内には長髪のアジア系のウェイターと、割烹着をまとった若者がいた。

2人の日本人に出会った日本料理店

 彼らは日本人で、長髪のウェイターはシンジ、割烹着を着たのがダイスケという。南米を放浪しているうちに、この地に居ついたという。

 私は、先ほど得体の知れぬ物売りが歩いていたが、あれは何を売っているのか、と尋ねた。彼らによると、ガンジャ(マリファナ)の葉に含まれるTHLという成分を壊さないように、葉をバターで低温で煎って、チョコレートを混ぜて固めたもの、いわばガンジャ入りチョコレートを「ガンジャブラウニー」といい、それを売り歩いているらしい。

 このTHLという成分が、吸引や飲食したりすると、脳内に影響を及ぼし、快楽、もしくは、不快な状態に陥るという。つまり、ハッピートリップもしくはバッドトリップである。

 麻は衣服などの生地で服などが作られたりしているが、このTHLという成分が社会に広がらないようにするために、世界各国では、最近、THLの成分を含まない麻が使われているという。

 ただしシンジの話によれば、コスタリカでもプエルトリモン県だけは、事実上、マリファナは黙認されているという。警察も、所持しているのを見つけても捕まえないらしい。この辺りでは、マリファナは粉末にして、クッキーにしたり、ヨーグルトなどドリンクに混ぜて飲む習慣が、かなり以前からあるようだ。