スナメリ食堂の一番人気は、毎日大きなガス釜でふっくらと炊き上げるごはん。お客さんから

熱海市内から30分ほど車を走らせると、のどかな里山の風景が広がる。山あいの限られた平地に田んぼと畑がパッチワークのように並んでいる(写真提供:筆者、以下同)

 「ここのごはん、どこのお米を使っているの?」

 と聞かれると、待ってました! とばかりに

 「地元のお米です!」

 私が胸を張るのもおかしいのだけれど、なぜか得意げになってしまう。

 お店で使っているお米は、熱海市内から車で30分ほど、伊豆の国市で作られているコシヒカリ。そのおいしさだけでなく、伊豆でお米が穫れることに驚くお客さんも多い。

 熱海で食事というと海産物のイメージが強いものの、地元で揚がるものは季節によって種類が限られているのが実情。熱海ならでは、伊豆ならではのおいしいものを求めるなら、野菜や果物、お米、お肉、乳製品などにも、もっと目を向けてほしい。

いつでも大賑わいの直売所、その人気の秘訣とは?

 熱海市と隣接する伊豆の国市は、伊豆長岡町、韮山町、大仁町の3町合併によって2005年に生まれた。伊豆半島北部の田方(たがた)平野の中央に位置し、野菜や稲作、酪農の盛んな地域。

 お店で使うお米、野菜のほとんどをこの伊豆の国市にある農産物直売所「大仁まごころ市場」で調達している。

 年間を通じて種類、品質ともに充実しているうえ、価格も手頃、そしてスタッフの対応も感じがよく、毎週通うのが楽しみになっている。お店で地元野菜をふんだんに使えるのはこの直売所のおかげ。

 お店をオープンする前に、熱海から車で1時間くらいの範囲にある直売所をひととおり回った。経営母体がJA(農業協同組合)のところもあれば、生産者が道路脇の小屋に野菜を並べているところもあった。

 規模の差こそあれ、同じ地域の旬の野菜を扱っているのだからどこでも同じような気もするけれど、そうでもなかった。