前回の『オバマを大統領にしたコミュニティーオーガナイズとは何か』に引き続き、ハーバード・ケネディ・スクールのガンツ教授によるコミュニティーオーガナイズワークショップの後半をご紹介します。

私たちにとっての「人々」とは誰か

 ワークショップ3日間のうち、2日目は参加者が大学ごとにリーダーシップチームを組織し、チームの共有目標を作ります。

 「自分の大学の卒業率は50%、もっと卒業する学生を増やさなくてはならない」「地元の高校から大学に行く人が非常に少ないので、増やしたい」「地元の人々が異文化に閉鎖的なので何とかしたい」と、大学生の視点ならではの共有目標が並びます。

 このワークショップは大学4年生を対象にしています。それは大学である程度の月日を過ごして大学の組織や文化を理解し、ネットワークもあるため、具体的に変化を生むアクションを起こせるという期待があるためです。

 そして最終日の3日目は目標を実現するための戦略とアクションを具体的に考えていきます。前日は朝8時から夜6時まで缶詰めで疲れているはずなのに、参加者同士の関係が深まり、エネルギーが高まっているのを感じます。

 まず、誰の力を結集したいのか考えます。誰と一緒に立ち上がってコミュニティーを変えて行きたいのか。曖昧に「○○町に住んでいる人」ではなく、「○○町でリーダーとして活躍している人」「異文化に関心がある人(例えばカルチャーセンターに来ている人)」のように具体的に考えていきます。

変化を起す前と後の世界の図(写真提供:筆者、以下同) 拡大画像表示

 そして現在その人々が直面している課題と、それを乗り越えた時に見える世界を考え、戦略目標を立てていきます。

 戦略目標は、測定可能で時間枠が決まっていなければなりません。例えばフロリダから来た大学生チームは、「大学卒業者が少ないのは授業料を払えず退学してしまう人が多いからであるため、大学における奨学金の額を2014年6月までに30パーセント増やす」としていました。

意外なところから現れる反対者

 次に関係者を洗い出します。変化を起こしたい人、現状を維持したい人、どっちに付くか分からないがその問題に関係する人について、彼らが持っている力、スキル、モノなどを付箋紙に書いて模造紙に貼っていきます。

 そして誰が連携してくれるか、競合もしくは協力者はいるか、誰が意思決定者か、といった点も分析していきます。実際にアクションを起こすとこの関係図は変わってくるので、時折見直します。