(英エコノミスト誌 2013年6月8日号)

不十分な基礎の上に新たな欧州通貨を作ってはどうか? 最初は非常にうまくいったのだから・・・。

 欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は、ユーロを救うためなら「どんなことでもする」という計画を明らかにした時、アメとムチをうまく組み合わせた。ECBに流通市場で自国国債を買ってほしいと思う国は、改革プログラムを受け入れなければならなかったのだ。

 ドラギ総裁は「モラルハザード」に気を配っていた。モラルハザードとは、すなわち、ひとたび圧力が取り除かれると、債務国が規律を失う危険のことだ。

 だが、モラルハザードは債権国にも影響を及ぼすことが分かった。昨年発表された「アウトライト・マネタリー・トランザクション(OMT)」は、ユーロ圏の債券市場が落ち着きを取り戻す助けになった。OMTプログラムに対するドイツ連銀の近視眼的な反対意見(6月上旬にドイツ憲法裁判所の審理でつまびらかになる予定だった*1)にもかかわらず、OMTは目覚ましい成功を収めた。

 だが、OMTは一方で、ユーロ圏を安定させるために必要な制度改革の推進を迫る債権国への圧力も和らげることにもなった。

 欧州各国は2012年6月、弱い銀行と衰弱した国々との致命的なつながりを断ち切るために銀行同盟の創設に着手することに同意した。だが、ユーロ圏最大の資金拠出国であるドイツと一部の国は、それ以来、銀行同盟に対するコミットメントを弱めた。ドイツのアンゲラ・メルケル首相とフランスのフランソワ・オランド大統領が5月30日に示した共同文書は、その最新の証拠だ。

 真の銀行同盟には3本の柱が必要になる。単一の監督機関、共同救済基金へのアクセスを持つ単一の破綻処理機関、そして共同の預金保険制度だ。仏独両国の計画は、1本半の柱を使って、大きな建造物が倒れないことを祈るようなものだ。

ドイツのせいで骨抜きに

 昨年6月からある程度の前進はあった。ECBは来年に、ユーロ圏の大手銀行の単一監督機関になる準備を進めている。ECBは、欧州の銀行の健全性を評価し、国益を超越するのに最も適している。だが、効果を発揮するためには、監督機関がその意志を実行できなければならない。

 このことは、経営難に陥っている銀行に直接介入し、株主と債権者に損失を割り振り、必要なら、残る穴を補填するために必要な公的資金を供給できる破綻処理機関を設置することを意味している。

*1=6月11、12日の両日、OMTがドイツの法律に違反しているかどうかについて審理が行われた