(英エコノミスト誌 2013年6月1日号)

従来の人口動態パターンが驚くほど急激に変化している。

 アナ・カロリーナ・ベルキオールさんの祖母は、1度も外に働きに出たことがない。6人の子供の育児に追われ、そんな時間はなかった。ベルキオールさんの母親は娘と同じように、ブラジル・サンパウロで教師として働いたが、人生の目標は家族を持つことだった。22歳で結婚して、すぐに第1子を身ごもり、結局、4人の子供の母親になった。

 「私もまだ21か22歳の時に、家族を持とうか考えたんですよ」。ベルキオールさんはこう話す。「でも、それは夢であって、具体的な計画ではなかった・・・大事なのは、キャリアを築くことだったんです」

 現在30歳になり、結婚して2年経った彼女は、多くの友人と同じように、今も1人目の妊娠を「計画中」だ。「祖母はとにかく祖父に尽くし、母は何とか乗り切って、多くのことを甘受しました。でも今は以前と比べると、私のような年齢、学歴の女性(ベルキオールさんは修士号を持っている)が男性に礼儀正しい態度を求めるのがずっと容易になった。男性優位や性差別に甘んじなくていいんです」

中南米の「伝統的な大家族」も今は昔

 ベルキオール一家は、南米大陸の人口動態の歴史をなぞってきた。

 バルセロナ自治大学のアルベルト・エステベ氏らの新たな研究によれば、中南米は「早い結婚と伝統的な大家族」から「晩婚と出産先送り」に至る道のりを転げ落ちるように疾走している。

 先進国では、こうした変遷に50年の歳月がかかり、変化は順を追って起きた。中南米ではその半分の時間で一気に起き、先進国より速く、予想し難い社会の変化をもたらした。

 国家が発展し始めると、その国の人口のパターンは2通りの変化を遂げる。まず、高い出生率と早死という状況が、低い出生率と長生きに転じる。この過程で、人口はまず急激に増加し、その後、伸びが緩やかになる。減速を示す主な指標が出生率の低下だ。中南米は、こうした人口変遷の第1段階がかなり進んだ状況にある。

 ブラジルの現在の合計特殊出生率は1.8だ。チリも同じだ。これは人口置換水準(2.1、長期的に人口が安定するとされるレベル)を下回る数値で、米国の1.9よりも低い。1960年に6.0近かった中南米、カリブ諸国の出生率は、50年後に2.2まで低下した。米国と欧州では、出生率がそれだけ低下するのに2倍の時間がかかった。