2008年のリーマン・ショックはアドテクノロジーの世界にもひとつのパラダイムシフトをもたらした。職を失った金融工学のエンジニアがニューヨークでアドテクノロジーの世界に転じて作ったシステムが、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)である。

 従来、「枠」ものとして取引されていた広告が、1配信ずつをオンライン上で入札する仕組みRTB(リアルタイムビッディング)で買い付けられるようになった。

DSPの登場が従来の「広告枠」モデルにもたらした大転換

 広告代理店の営業マンが「手売り」していたネットのディスプレイ広告は、アカウントを持てば広告主も直接オンラインで、自分の買いたい配信(対象者、掲載面、タイミングなど)を買いたい値段で入札できるようになったのだ。

 従来広告は売り手の論理で作られた「枠」を買い手が選ぶという仕組みで成り立っていた。しかし検索連動型広告が広告のオンライン入札という画期的な仕組みを持ち込み、DSPでディスプレイ広告や動画広告にもこのモデルが導入された。

 少し仕組みを説明しよう。

 DSPはデマンドサイドつまりバイイングサイドの仕組みだ。これに対となる仕組みがSSP(サプライサイドプラットフォーム)というメディア側つまりセルサイドの仕組みである。

 ネットユーザーがSSPに繋いだ掲載面にアクセスすると、その瞬間に、まず「この掲載面にこんなユーザー(クッキー)が今アクセスしているが、広告を出稿するか」というビッドリクエスト(入札要求)がDSPに届く。

図1:RTBによる広告配信の仕組み 拡大画像表示

 DSP側では登録されているキャンペーンに条件の合うものがあれば、いくらであれば買うというビッド(入札)が行われる。

 複数のDSPに対してSSPはビッドリクエストをかけるので、入札が返ってきた中で最も高い価格での入札に対して応札し、DSP側のアドサーバーから配信できるようにタグを送る。このやり取りの間が、0.05秒以内という早業だ。

 これを1配信ずつ行い、月間何百億という広告配信を行うのが、RTB(リアルタイムビッディング)である。