(英エコノミスト誌 2013年5月25日号)

アップルのCEOが米国議会の公聴会で行った証言は、様々な面で法人税制の改革の必要性を裏付けた。

米アップルの課税逃れ疑惑、上院公聴会でCEOが否定

5月21日に米上院の常設調査小委員会の公聴会に出席したティム・クック氏〔AFPBB News

 「支払うべき税金は1ドル残らずきちんと支払っている」。アップル最高経営責任者(CEO)のティム・クック氏は5月21日、米上院の常設調査小委員会で、こう証言した。

 前日の20日には、小委員会が、同社がタックスヘイブンやペーパーカンパニーを巧みに利用し、2009~12年に上げた440億ドルの利益に掛かる税金を米国政府に支払っていないという報告書を発表していた。

 小委員会のカール・レビン委員長によれば、アップルは2本立ての戦略で課税を逃れているという。まず、「知的所有権から利益を生む仕組みを国外のタックスヘイブンに移転する」。そして、「収入が外国に移ったら、様々な戦術を駆使してそこに米国の税金がかからないよう守る」。

 報告書で挙げられている戦術の1つが、アイルランドのコークに子会社のアップル・オペレーションズ・インターナショナル(AOI)を設立したことだ。この会社は、グループの国際販売部門の親会社となっている。AOIは、ほかの子会社が上げた巨額の利益を吸い上げ、2009~12年に300億ドルの利益を計上した。しかし、過去5年間、どこにも税金の申告を行っていない。

アイルランド子会社は課税逃れの「聖杯」

 AOIはアイルランドの法人だが、実質的には米国で経営されている(取締役会は米国で開かれる)。そのため、アイルランドと米国のルールの違いのおかげで、税務上はどの国にも属さないと主張できる。米国では法人化されている場所が会社の所在地と見なされ、アイルランドでは経営ないし管理している場所が会社の所在地とみなされるからだ。

 レビン委員長に言わせると、この手法は課税逃れの「聖杯」だ。利益に国籍がないため、どの国も税金を徴収できないのだ。

 アップルは、2012年に米国で60億ドルの税金を支払ったことを指摘する(全世界での税引き前利益は560億ドル)が、レビン委員長らの関心を引いているのはアップルだけではない。

 小委員会は以前にも別の公聴会で、マイクロソフトとヒューレット・パッカード(HP)の課税逃れを追及した。米国企業はこうした手法によって徴税を逃れ、全体で国外に1兆9000億ドルをため込んでいると推定されている。