マドンナ、プリンス、クリスティーナ・アギレラといえば、米国を代表する歌手で有名だ。これらアーティストのバックバンドベーシストやソロプレイヤーが競って買い求めるエレキベースがドイツ・ワイン街道沿いの小さな工房で製作されているのをご存じだろうか。

 「ドイツのストラディヴァリウス」と賞賛されるエレキベースを製作する職人イェンス・リッター氏(39)に話を聞いた。

ドイツのストラディヴァリウスを製作するベース職人とは

時間が取れないというリッター氏を我が家に招待し、夕食(もちろん日本食)を共にしながらお話を聞いた(特記以外は筆者撮影、以下同)

 リッター氏は、ドイツ・ワイン街道沿いの街ダイデスハイムに工房を構え、従業員1人と共にエレキベースを製作している。

 最高峰のエレキベースを作るドイツ職人として、音楽業界でリッターベースの名を知らない人はいないと言ってもいいだろう。

 1996年に創立し、たった2人で製作しているリッターベースがここまで成功を収めた理由には、客へのきめ細かいサービスと、全世界へクオリティの高い作品を提供していることだ。

 しかし、リッターベースを全世界に知らしめる決定打となったのは、一度目にしたら忘れられない独創的なデザイン、強烈なインパクトのルックスとサウンドのよさでトップミュージシャンの購買心をくすぐったことだろう。

 かのマドンナ、プリンス、クリスティーナ・アギレラなど著名歌手のバックバンドプレイヤーや、ジョージ・ベンソン、フィル・レッシュなどが競ってリッターベースを買い求め、個性的なデザインとそのクオリティの高さを絶賛する。

 リッターベースは、注文を受けてから製作するため、完成には15カ月ほどかかる。4弦、5弦、6弦、7弦のベースを中心に、年に70本ほど製作。ここ数年、注文殺到で生産が追いつかないため、事務業務はアウトソーシングに委託した。

 ベースの注文は、プロプレイヤーやコレクターが多いと言う。顧客の9割以上がオンラインで注文をするそうだ。米国からの注文が7割以上を占め、ドイツ、英国、日本などが続く。

リッターベースのショールーム・1(©ritter-basses.com)拡大画像表示
リッターベースのショールーム・2(©ritter-basses.com)拡大画像表示