食物繊維が「体にいい」のは本当か?

心筋梗塞のリスクを低減、がん予防の効果は疑問符

2013.05.17(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要

 その後、研究が進み、様々な病気の予防に効果があることが明らかになると、1990年代には、食物繊維ブームが起こった。

ダイエット、糖尿病予防、整腸・・・様々な効能

 食物繊維は、エネルギー源としては役に立たない。しかし、体内の生理作用において重要な役割を担い、現代人の食生活には欠くことができない重要な栄養素であると認められるようになった。

 かつて、こんにゃくや寒天を使ったダイエットがブームになったが、どちらも主成分は食物繊維だ。それらを食べると満腹感が得られるにもかかわらず、消化されにくいためエネルギーはほとんどない。飽食の現代においては、エネルギーにならないことがかえって役に立っている。

 食物繊維の特徴は、保水性がいいことだ。消化管の中で、食物繊維は水を含んで、膨らみや粘性が増す。そのため、胃の中にとどまる時間が長くなり、食べすぎを防ぐ。胃から小腸への動きもゆっくりとなるので、血糖値が急激に上昇するのを抑えて、糖尿病の予防に役立つ。大腸では便の量が増え、ビフィズス菌などの腸内細菌の割合も増やすため、便秘を改善すると言われている。

 また、小腸で吸収されずに大腸に入った食物繊維は腸内細菌による発酵を受け、脂肪酸やメタンガスなどを生成する。生成物の一部はエネルギー源としても利用されている。

 このようなことから、人の食物繊維を利用する能力は意外と高いのではないかという説もある。

 なお、大腸がんなどのがん予防の効果は現在では否定されている。最近の疫学研究の結果とがんとの関連は一致していないのだという。

欧米型の食事になり食物繊維の摂取量が減少

 食物繊維をはじめとして健康食品のブームが次々に繰り返された要因には、戦後から50年で、日本人の食生活が大きく変化したことが挙げられる。

 1960年代の食事は、米を中心に魚や野菜、大豆で構成されていた。経済力が高まるにつれて、食生活も豊かになり、従来の食事に肉や牛乳、果物が加わった。

 それまで日本人の食生活は炭水化物の摂取量が多く、タンパク質や脂肪の摂取量が少なかった。その後、タンパク質や脂肪の摂取量が増え、1980年半ばごろの日本人の食生活における栄養バランスはとても良くなった。ところが、その後も脂肪の摂取量は増え続け、今では脂肪過多の欧米型の食生活となってしまった。かつて多かった食物繊維の摂取量も減った。

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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。


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