マット安川 日中関係をめぐる報道が相次ぐ中、ウオッチャー宮崎正弘さんを迎えて中国当局の内幕や新しい幹部の動向、経済状況や外交政策について、興味深いお話をたくさんご紹介いただきました。

中国から「アジア重視」へ。日本の外交に地殻変動

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:宮崎正弘/前田せいめい撮影宮崎 正弘(みやざき・まさひろ)氏
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。近著に『オレ様国家 中国の常識』『2012年、中国の真実』『中国が世界経済を破綻させる』など。メールマガジン『宮崎正弘の国際ニュース・早読み』を発行。(撮影:前田せいめい、以下同)

宮崎 中国は今、アジアはもとより、世界中で暴れています。特にアジアでは、勝手に自国の領土だと宣言して地図に書き込んだ上に、南シナ海の南沙など3諸島を管轄する行政区「三沙市」までつくった。

 このように好き勝手な振る舞いをしている中国に対して、領有権を争うフィリピンやベトナム、台湾などが反発している。逆に言うと、日本の主導でこれらの国・地域をうまくまとめることができます。

 実際、フィリピンの外務大臣が昨年、英フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、日本が防衛力を強化することはアジアの安定につながるので歓迎する、と話しています。

 そういう流れの中で、日本の外交姿勢もガラっと変わり、アジア重視になりました。1月、麻生(太郎)副総理がまっ先にミャンマーに行きました。次に岸田(文雄)外務大臣がフィリピン、ブルネイ、オーストラリア、シンガポールを訪問し、安倍(晋三)総理もベトナム、タイ、インドネシアを訪問した。

 これは、実は地殻変動にも似た大きな日本外交の姿勢の変化なんです。日本は昨年まで、中国、中国と言っていました。日本企業もチャイナ、チャイナと言っていた。

 しかし、昨年秋の反日暴動以降、財界の合言葉も変わりました。「チャイナ・プラス・ワン」。中国ともう1カ所かそれ以上ということで、今アジア諸国がブームになっています。

中国は日本とチキンゲームをやっているだけ

 尖閣諸島沖における中国の「ロックオン」については、あまり堅苦しく考えない方がいいと思います。

 というのも、習近平総書記が軍に対して最初に指示したのは、酒を飲むのをやめろということです。禁酒令を出した。次に、送り迎えに赤絨毯を敷くのをやめろと。

 さらに、戦争の準備をしろと言った。つまり、それまでダラけていた軍隊に、ちょっと緊張感を与えようというのが真意だったんです。