2012年12月の総選挙で自民党政権が誕生し、今年に入ってからは円安株高の流れが続いている。安倍晋三政権の景気対策は果たしてIT関連業界において良い影響が出てくるのであろうか?

 安倍政権の景気対策は金融緩和を中心として進められているが、一般の企業向けの中長期的な対策としては規制緩和と補助金・減税のようだ。

 TPPへの参加をはじめ規制の枠組みが変わると、ビジネスの枠組み、それに応じたシステムの見直しも発生する。補助金や減税についても、どういう活動が恩恵を受けられるのかにもよるが、うまくすれば情報システムに企業の投資資金が回ってくる可能性はある。大きな流れとして、IT業界には順風が吹くと見てよさそうだ。

 IT業界は1980年代からずっと成長軌道を描いてきたが、リーマン・ショックで大きな打撃を受け、現在は踊り場の状態にある。企業努力はもちろん必要だが、政府の景気対策に期待をかけたくなるのは無理もない。

会社の業績が良くなっても業界の年収は変わらない

 では、企業の業績はそれなりに良くなるものとして、そこから収入アップにつながるかを考えてみたい。政治家は「国民の生活」「豊かさ」という言葉をよく口にするが、果たしてそこに至るのか?

 業績向上が給与に反映されるかどうかは、業界や所属団体によってまちまちであろう。もちろん企業の方針によっても異なる。ローソンはじめ一部の企業で賃上げの動きはあるが、経団連は消極的だったりして、一概には言えない。

 特にIT業界は、勢いがいいときは飛躍的に収入が上がったり、逆によくないとバタバタと人員が整理されたりする。一般企業の動きは参考にならないようにも思われる。

 IT業界における収入アップの理想的なメカニズムを簡単に言うと、「情報システム投資が増える」→「案件が増える」→「仕事が増え、売り手市場になり単価が上がる」→「各社の収益が上がる」→「利益の配分や人材確保のため就業者の収入が上がる」という流れである。この流れがスムーズにいけば万々歳なわけだ。