(2010年6月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
インドネシアのリゾート地バリ島に押し寄せる中国人旅行客の増加は、観光市場の力学だけでなく、神様の顔まで変えつつある。クタビーチの道沿いに並ぶ露店からウブド村の富裕層向けギャラリーまで、島中で売られている木像や石像のほとんどが、中国仏教の慈悲の女神、観音の顔に彫られているのだ。
バリ島で売られる彫像が観音様に変わった
ヒンドゥー教徒が多数派を占めるバリ島では、ほんの数年前まで、彫像といえば象の頭を持つガネーシャや、神鳥ガルーダに乗るビシュヌなど、ヒンドゥー教の神を模したものばかりだった。現地のツアーガイド、アディ・ウィジャヤ氏は、「中国人観光客はバリ島の未来だ。我々はいろいろなものを彼らの好みに合わせてきた」と話す。
2009年、世界的な経済危機をよそに、外国旅行に出かけた中国人の数は、5.2%増の4220万人を記録した(2001年には700万人足らずだった)。一方、旅行に使われた金額は、前年比16%増の約420億ドルに達した。
中国人旅行客の渡航先の3分の2以上は、同国の特別行政区である香港とマカオが占める。しかし、カメラを手にした気前のいい中国人ツアー客の姿は、今や世界中で見られる。存在感を増してきたその様子は、1980年代に世界の観光地に突如押し寄せた日本人観光客を彷彿させずにはおかない。
中国人観光客の突然の台頭は、ここ数十年の世界の観光市場で最大の出来事だと、複数のアナリストが口をそろえる。2003年まで、中国政府が観光目的の渡航を認めていたのは、アジア太平洋地域を除けばトルコとエジプトだけだった。
2003年以降、中国政府は100近い国への観光目的の渡航を認めるようになった。米国への旅行は2008年6月に解禁された。ただし、渡航を許されているのは豊かな大都市に暮らす人のみだ。
フランスにとって一番のお客様は中国人
フランスの大手デパートは中国人向けの買い物ツアーに力を入れている〔AFPBB News〕
フランス政府の調査によると、2009年に中国人観光客がフランス国内で使った金額は、ロシアを含むすべての国の観光客を上回ったという。フランスに入国した中国人の数が2008年から17%減ったにもかかわらずだ。
フランスの旅行会社は、中国人向けの買い物ツアーに力を入れている。ギャラリー・ラファイエット、プランタンといったパリのデパートは、中国語での表示やサービスを開始した。
イタリア政府は中国の富裕層を呼び寄せるため、ぜいたくな休暇を過ごせる環境を用意しようとしている。その一方で、観光ビザで入国し、闇経済に消えていく中国人の増加を抑えようともしている。
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