日本国内にある米軍基地の74%が集中する沖縄。生活環境の悪化、“特権”を持つ米軍関係者の犯罪など、基地が存在することによる弊害を長年にわたって甘受してきた沖縄で、いま“独立論”が広がりつつある。

 学際的な研究と同時に国際的に独立をアピールしていく動きが出ている。この担い手として自治・独立への学問的研究と運動を進める、龍谷大学経済学部教授、松島泰勝氏に、沖縄(琉球)独立の理念と実現性について聞いた。

 穏やかな語り口ながら、日本と沖縄の間には差別と植民地化の構造があると批判する松島氏は、世界の独立例を踏まえて、その実現性とメリットを語る。かつての琉球国の存在やまとまりを意識して「沖縄」とは言わず「琉球」という名称を使う。

「琉球独立総合研究学会」立ち上げに向けて

松島 泰勝(まつしま・やすかつ)氏
1963年石垣島生まれ、南大東島、与那国島、沖縄島那覇で育つ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒、同大学院経済学研究科博士課程履修単位取得、経済学博士。97年から99年までグアムの在ハガッニャ日本国総領事館、99年から2000年まで在パラオ日本国大使館で専門調査員として勤務。東海大学海洋学部海洋文明学科助教授を経て、現在、龍谷大学経済学部国際経済学科教授。NPO法人「ゆいまーる琉球の自治」代表。著書に『琉球独立への道-植民地主義に抗う琉球ナショナリズム』(法律文化社)をはじめ『沖縄島嶼経済史―一二世紀から現在まで-』『琉球の「自治」』(ともに藤原書店)、『ミクロネシア―小さな島々の自立への挑戦』(早稲田大学出版部)

――これまで沖縄の中で「沖縄は独立すべきだ」という論はありましたが“居酒屋談議”の域を出ないとも言われてきました。それが最近現実的な議論になってきました。

松島 私は『琉球独立への道-植民地主義に抗う琉球ナショナリズム』(法律文化社2012年2月刊)という本を出しました。

 ここではこれまで思想的、文学的に論じられてきた独立論を、脱植民地化の国際的な動きを研究することで、国連や国際法と関連して、具体的なプロセスを含めて論じました。こうした動きがいま出てきています。

 1996年には、ジュネーブの国連欧州本部に行って、国連人権委員会の中の先住民族作業部会で先住民族として琉球での植民地主義の問題について発言し、世界の先住民族と交流しました。琉球と世界との関係も強くなり、独立論が地に足が着いた具体論として語られるようになりました。

 また、仲間と「琉球独立総合研究学会」というのを4月に立ち上げる予定です。政治学、経済学、国際法、言語学など学際的な視点から独立の可能性、プロセスを研究し発表していく考えです。

――なぜ、国連を通して国際的に訴えようと思ったのですか。

松島 国際法に基づいて世界の先住民族とネットワークをつくろうと思ったきっかけは、大田昌秀・元沖縄県知事が行った代理署名訴訟(米軍用地の強制使用に必要な代理署名を拒否できるかどうかで国と当時の大田知事との間で争われた)で、96年8月に最高裁で大田知事が敗訴したからです。

 これでは国内では基地問題は解決はできない、常に国内問題に矮小化され、今後も裁判所、国会、行政府に握り潰されてしまうと考え、国際問題として認知してもらうことにしたのです。国連の人種差別撤廃委員会は、琉球人は先住民族であり、基地の押しつけは人種差別であることを認めて日本政府にも勧告しました。国際人権規約委員会でも差別の問題として見ています。

 こうして、国際的なネットワークを使って日本、アメリカ政府に責任を問う。これがいままでの独立議論と違うところです。