近年、起業に関心を持つ人が多いようです。自分で会社を興して一国一城の主になろうとする理由は様々ですが、たいていの場合ネックになるのは資金でしょう。ヒト、モノ、カネは事業の3要素だと言われますが、資本がほとんどいらない一部の事業は別として、カネがなければヒトもモノも得られないのが普通です。

 その、最も大事な資金は、どうしたら得られるのでしょうか?

 資金調達は、大きく分けて2通りの方法があります。1つは自分で貯蓄してカネを作る。もう1つは、他人の財布にあるカネを使わせてもらう、です。

浪費をする国や会社は破滅する

 <大事業はすべて、けちと見られる人物の手によってしかなしとげられていない。>

(『君主論』、マキアヴェリ著、池田廉訳、中公文庫)

 

 マキァヴェッリは、基本的に君主は、人から好かれる、よい評判が立つのがいいと考えていました。しかし、金離れのよい、気前のよい人と見られるのは避けるべきで、「あいつはケチだ」といった悪評は受けても気にするなと言います。

 財布のヒモが緩いと思われると、おカネ欲しさに人が集まってきます。集まってきた人を満足させようとすると浪費をしてしまい、カネがなくなります。

 持っているカネが少なくなると、普通の人ならまずいと考えて浪費をやめようとします。しかし君主や社長など権力を持つ人たちの中には、自分の立場を生かして実入りを増やせば、これまで通りの浪費ができると考える人がいます。

 彼らは国民に重税を課したり、社員の給料を減らしたりして贅沢の原資を確保するのですが、たいていはやり過ぎて国民や社員から恨みを買って破滅する。

 君主や社長にとって、金が欲しくて近寄ってくる少数の輩より多数の国民や社員の方が大事なはずなのに、大事な人を苦しめて輩を満足させる。それで破滅しない方がおかしいでしょう。

 君主や社長の仕事は大事業を行うことで、そのためにはカネが必要です。そのカネを浪費する輩など、自分に近づけてはならない。それにはケチだと評判が立つのがいちばんよいというわけです。