「ジャストインタイム(Just In Time)」は今や世界中のものづくりの業界で欠かせない「キーワード」になっています。

 その昔、ある政党に「下請けいじめである」「道路を混雑させる元凶である」などと国会で取り上げられたことがありますが、現在でも、ジャストインタイムを誤解して毛嫌いしたり、誤った運用をしている企業が少なくないようです。本コラムでは、「本流トヨタ方式」における「ジャストインタイム」とは何かを、これからも回を重ねてお伝えしていきたいと思っています。

 前々回は、そもそも「タイミング」とは何かを考えると、そこには「ジャストオンタイム(Just On Time)」(=あらかじめ決めておいた時刻に合わせて行動する)と、「ジャストインタイム」(=最終的には相手の行動に合わせてこちらも行動する)の2つがあることを説明しました。

 前回は、激しく動く「市場」に完全同期して生産しようとすると、過大な生産能力を必要とすることを、戦闘練習機と旅客機の違い(離陸重量/エンジン出力)を例にとって説明しました。同期生産でつなぐと、サプライヤーにも同様に過大な生産能力を押しつけることになるのです。

 今回は、より身近な「需要」と「供給」の本来のタイミングについて考えてみましょう。

 本流トヨタ方式では正確に把握するために次のような見方で対象物を観察します。

・「需要」・・・客先の数は? 売れる頻度は? 売れる量は?

・「在庫」・・・消費に要する時間は? 在庫量は金額ではなく、消費に要する時間で把握。売れたタイミング、量を銘柄別に把握し、補充することで、指定された最大量と最小量の間で管理された状態を「店」と表現します。

・「供給」・・・1個作るための所要時間は? 客が注文してから入手するまでの時間(リードタイム)は? 連続して同じモノを作り続けたら、時間当たり何個できるか? 段取り替えにどれ位の時間がかかるか?