野田佳彦総理が解散を決断した。選挙はやってみなければ分からないが、現在の支持率の低さから見て、民主党が従来通り衆議院で過半数の議席を確保するのは極めて難しいと考えられる。民主党単独過半数の時代は終わり、新たな時代に移行する可能性が高い。

民主党の3人の総理はいずれも外交で躓いた

衆院解散、12月に総選挙へ

衆議院が解散された11月16日、本会議場で頭を下げる野田佳彦首相〔AFPBB News

 民主党政権は2009年9月から3年余りの間に、鳩山由紀夫総理(2009年9月~2010年6月)、菅直人総理(2010年6月~2011年9月)、野田総理(2011年9月~現在)の3人が総理大臣に就任したが、3人とも任期中に外交で躓いた。

 鳩山総理は米軍の普天間基地移設問題について、少なくとも県外に移設すると発言したが、結局移転先が見つからず、問題は宙に浮いたままになっている。これがネックとなり、日米協力関係は長期間にわたって膠着した。

 菅内閣は中国の漁船が日本の海上保安庁の巡視艇に衝突した事件に際して、中途半端な対応を取り、内外から批判を浴びた。中国は対抗措置としてレアアースの対日輸出を厳しく制限し、通関手続きも止め、多くの日本企業が苦しめられた。

 そして野田内閣は尖閣諸島を国有化したため、同島の領有権問題が表面化。日中関係は国交正常化後40年の歴史の中で、最悪の状況に陥った。

外交関係の悪化が経済に与えるダメージはますます拡大

 このように3人の総理は、いずれも日米関係、日中関係に深刻なダメージを与え、外交・防衛、経済面において日本の国益に大きな損失をもたらした。

 もし日米関係が良好であれば、この3年余りの間に日米両国がアジアを舞台に政治経済両面で幅広い協力プロジェクトを展開できていたはずである。普天間問題はそのチャンスを奪った。

 日中関係の悪化が与える影響はさらに大きい。中国における日本企業の製品・サービスへの信頼は高く、中国人の所得水準の上昇に伴い、根強い需要は引き続き拡大していくと考えられる。

 中国事業から得られる利益が年間1000億円を超える企業も増えつつあり、企業経営全体にとって中国市場の重要性はますます高まっている。来年以降も、中国事業の収益が増加し続ける可能性は高く、将来再び日中間の深刻な摩擦が生じれば、日本企業のダメージは今回以上に大きくなる。

 言うまでもないが、対米・対中外交関係が日本の国益に与える影響は非常に大きい。