昨年9月の発足直後には各種世論調査で60~70%台という高水準になっていた鳩山内閣の支持率は、今年5月には20%前後にまで落ち込んでいる。米軍普天間基地移設問題が原因となって社民党が連立政権を離脱した後、参院民主党の改選組を中心に、鳩山由紀夫首相の退陣を事実上求める動きが表面化。首相の進退問題が一気にクローズアップされる事態になった。

 6月1日夜、鳩山首相・小沢一郎民主党幹事長・輿石東参院議員会長の3者会談が開かれた。だが結論は出ず、この問題は2日以降に継続協議されることになった。鳩山首相の続投の意志が強いとの見方や、参院選を前にして小沢幹事長が鳩山首相とセットで辞任することの困難さ、郵政改革法案を何とか今国会で成立させたい国民新党の意向などが取り沙汰されている。一方で、週内にも参院に提出されるとみられる鳩山首相問責決議案が民主党の一部議員の造反で可決される場合に、それが政権への致命的な打撃になる可能性も意識されている。

 今回の鳩山首相進退問題について、マーケットの視点から筆者なりにポイントを列挙すると、以下のようになる。

  • (1)日本経済(さらには日本を取り巻く海外経済)の状況は、仮に日本の首相が交代する場合でも、急に変化するわけではない。
  • (2)金融市場の関心事は数多く、欧州信用不安問題の影響力が引き続き非常に大きい。日本の政変は、市場が消化する数多い材料の1つにすぎない。1日の欧米市場の動きが示す通り、株価とユーロ相場については、下落余地を探る動きが当面続くと予想される。昔から為替市場では「政治に弱い円」と言われることがしばしばあるが、1日の東京市場ではユーロ安円高の進行が目立った。日本の政治情勢混迷よりも、ユーロ先安観あるいは「逃避通貨」としての円の買い需要の方が勝っていたことは明らかだろう。