小津安二郎監督の『東京物語』(1953)が、英国映画協会(BFI)が発行する Sight & Sound Magazine 選出の「The Greatest Films」映画監督投票部門で堂々第1位、批評家部門でも第3位に選ばれた。

5万人を超えた100歳以上のお年寄り

『東京物語』で老父を演じた笠智衆は老け役で鳴らした。自身は88年の生涯だった

 かつてキネマ旬報「日本映画オールタイムベストテン」でもナンバーワンとなったことがあるこの作品、戦後間もない頃、成長した子供たちと再会した老夫婦を通して家族や老いなどの問題を静かに語った名作だ。

 高齢化の進む今見ると感じるところが多いのかもしれない。

 先週、敬老の日を迎えた日本では、100歳以上の人口が5万人を超えた。ちなみに手元にあるデータで一番古い1963年当時は153人にすぎない。

 人口当たりで見てみると、高知、島根、山口、鹿児島、沖縄と西日本に多く、下位は埼玉、愛知、千葉、神奈川、栃木、大阪。しかし、実数となると、東京、大阪、福岡といった大都市部が多数を占める。

 テレビでは新たに100歳を迎えた人のもとを知事などが訪れた様子が流され、その健勝ぶりには感心させられた。

100歳のドライバーが起こした交通事故

 しかし一方で先月末、米国では、100歳のドライバーが起こした交通事故が大きく報道されていた。ドライバーのシニア化は年々進んでいることとはいえ、100歳ともなればインパクトがある。

 クルマのコントロールを失い事故を起こしたとのことだが、今のクルマ、特にオートマ車は動かしたり止めたりするだけなら実に簡単。そのため、ひとつ間違えれば凶器にもなりかねないことは、高齢者のブレーキとアクセルの踏み違いによる事故が多発していることが如実に物語っている。

 そんな事故は、公共交通機関が乏しく、自家用車を足として使わざるを得ない地域で頻発している。

 生活必需品を買うにもクルマを使わなければならず、その「足」を持たなければ買物難民と化してしまうクルマ社会化は、広い国土を誇る米国のみならず、日本でも地方を中心に進んでいる。