「8分の7」だけでは甦らない石巻の水産業

産地の復興には、消費地の販路開拓が不可欠

2012.09.19(Wed) 高成田 享
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 宮城県石巻市の水産関係者を回ったら、「8分の7」の話で持ちきりだった。

 これは、東日本大震災復興交付金の第2次分(総額2600億円)をもとに、被災した地方自治体が水産加工業の再生のために事業を公募し、その際に自治体が事業費の8分の7を補助するというもの。

 2011年の補正予算で認められた「グループ補助金」の補助が4分の3だったのに対してさらに有利な条件だけに、これに乗るべきかどうか、周りの様子を探りながら、思案しているのだ。

加工設備だけが増えても、パイが広がらなければ・・・

 石巻市に配分される交付金は140億円(事業規模は160億円)。1件当たりの上限は15億円と言われ、10件前後が選ばれると見られている。

 9月上旬にこの事業が公表されたあと、下旬に説明会、10月末に募集締め切り、11月中旬に決定、というあわただしい日程になっている。

 審査では、設備の設計図など具体的な内容が必要とされているため、「事前に情報を手に入れてなければ間に合わない」といった不満を口にする人もいた。また、採用されるには「高度化」が条件になると言われているため、水産加工に関わる新規技術を求めて、あちこちに打診している業者もいる。

 「震災で廃業したり、売り先を減らしたりした水産加工業が多く、このままでは、震災以前の経済規模に戻すことは難しい。こうした補助金制度で、水産加工設備を増やし、漁獲物の消費を広げることが産地の復興には必要だ」と、石巻魚市場買受人組合の布施三郎理事長は語る。

津波で壊れたままの工場も残る石巻の水産加工団地=石巻市の水産加工団地で(筆者撮影、以下同)
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1948年生まれ。東京大学経済学部卒業。71年に朝日新聞社に入社。山形・静岡支局員、東京経済部員、アメリカ総局員(ワシントン)、経済部次長、アメリカ総局長(ワシントン)、論説委員などを歴任。96年から97年にかけてテレビ朝日「ニュースステーション」キャスターを務める。定年後にシニア記者として2008年1月より2011年2月まで石巻支局長。2011年4月より仙台大学教授。仙台白百合女子大学非常勤講師、前橋国際大学客員教授。農林水産省太平洋広域漁業調整委員会委員。主な著書に『ディズニーランドの経済学』(共著)、『アメリカの風』、『アメリカ解体全書』(共著)、『榎本武揚』(共編著)、『こちら石巻 さかな記者奮闘記』『話のさかな・コラムで読む三陸さかな歳時記』(共編著)などがある。


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