バンクーバー新報 2012年8月02日第31号

 コキットラムにあるリバービュー病院が閉鎖された。精神障害者専門であることから一般には馴染みがなかったようだが、実はここは世界各国からの樹木を集めて作られた植物の宝庫であり、野生動物の生息地でもある。

 閉鎖後の敷地は今後どのように利用されるのか。長年整備してきたこの自然地の保護を提唱するナチュラリストクラブに属する高橋清さんに敷地内を案内してもらった。

白フクロウ減少の謎

高橋清さん。自宅の作業場にて。この18年で高橋さん設計の巣箱150個以上がグレーターバンクーバー周辺に取り付けられた

 野鳥の保護に従事する高橋さんにとって、夏は雛の数を調べたり、必要に応じて足に標識をつける多忙な時期だ。2009年の夏もそうだった。

 天皇皇后両陛下ご来加の際、カメラマンとして本紙取材班に加わった高橋さんは、両陛下を見送ったその足で、ムラサキツバメの巣がある川べりへ駆けつけた。

 今年は絶滅の危機にあるメンフクロウが、高橋さんが作った巣箱で雛をかえした。

 2007年、行政組織メトロバンクーバー管轄のコロニーファームにある建物の側面に、高さ1メートルの巣箱を取り付けた。雛がかえったのはそれ以来これで3回目。

 カメラやコンピューターが得意な高橋さんは、巣箱にウェブカメラを取り付けておいた。巣箱内を観察して研究に使うほか、近くの幼稚園で園児に雛の写真を見せたりもしている。

 「カナダ西部のメンフクロウは今年、カナダ野鳥研究協会によって絶滅危惧となりました。数が減った原因の一つに農薬が挙げられます。メンフクロウが食べたねずみが農薬のかかった穀物を食べていたということです」

 農薬が及ぼす危険性。これは他人事ではない。もうひとつ考えられるのは、数が減ったため近親での交配でDNAが重なり、寿命が短くなったということだ。

 「もしそれが証明されたら、数が安定しているカリフォルニアあたりから何十羽のメンフクロウを捕まえてきてここに放つという計画もあります」