『日本に国家戦略はあるのか』(本田優著・朝日新書)によると、国家戦略とは「国力」を使って「国益」を実現する方法であり、「国益」とは国民が幸福に暮らせる(国民に安心・安全を与える)ことであるという。さらには、「国力」とは国際関係に影響を及ぼすことのできる力であるという。
国家戦略とソフトパワー
その「国力」の要素は、(1)軍事力(2)経済力(3)文化や理念などの抽象的なイデアの力に(4)外交力を加えた4つに分ける(元駐米大使栗山尚一氏)ものや、(1)軍事力(2)経済力(3)ソフトパワーの3つに分ける(ビル・クリントン政権国防次官補ジョセフ・S・ナイ・ハーバード大学教授)ものがある。
いずれにしても (1)軍事力(2)経済力は、他国に対して軍事制裁、経済制裁などの手段となるので、その「国力」はハードパワーであり、その他の「国力」はソフトパワーとして国際関係に影響を及ぼすことのできるパワーとして注目したい。
日本国の核武装・軍事大国化については、国内はもとより国外、特に東アジア・東南アジア諸国に大いなる警戒・懸念があり、また、日本の経済は国内就労人口の減少は顕著な現状にあり、少子高齢化による財政状況は益々厳しくなってきており、経済力は弱まる傾向にある。
日本国の軍事力を増強するには、かなり高いハードルがあり、経済力を以前のレベルに回復することは、現実的ではないように思われる。
そのような中で、日本国のトータル的な国力を維持、又は向上させ、国際社会における日本国の存在感、発言力を高めるにはソフトパワーを大きくすることが唯一の現実的方法かもしれない。
ソフトパワーという海上警察力
ナイ教授が言うソフトパワーとは、「それは強制や報酬ではなく、魅力によって望ましい結果を得る能力である。それは一国の文化、政治的理想、政策から生まれる。我々の政策が他国から見て道理にかなっていると映れば、我々のソフトパワーは大きくなる」と言うパワーである。
国際世論にアピールすることができる政策において、例えば二酸化炭素削減問題、新エネルギー確保、国際紛争防止などに寄与する政策を提言し、その政策の有効性を実証・実現すれば、他国もその政策に同意し、それがグローバルスタンダードになれば、その国の発言力は増し、「国力」の一部であるソフトパワーは大きくなる。
国際紛争などにおいて、軍事力による対象の破壊・除去によって問題解決するハードパワーに対して、平時の日常生活・活動を破壊等することなく問題解決するソフトパワーは、有効かつ現実的な日本国における「国力」の1つになると確信している。
国際社会環境を良くするために日本国がどのような役割を果たすかを考え、より安定した安全保障環境等の構築のために、より積極的な役割を果たしていくことが重要になる。