本来のトヨタ生産方式を説く本コラム「本流トヨタ方式」は、2011年11月から「自働化」の話に入っていて、今回で18回目になります。

 「本流トヨタ方式」というのは「ものの見方、考え方」なので、工場や会社の中の話にとどまらず人間社会の隅々まで適応されるべきと筆者は考えています。そんな中、福島第一原発事故に対する「国会事故調」報告書が発表になり、マスコミでも大きく取り上げられました。筆者もネットで「ダイジェスト版」を入手して読んでみました。

 序文には、「規制の虜(Regulatory Capture)」(俗に言えばミイラ取りがミイラになること)が背景にあったとし、さらに「・・・50年にわたる一党支配と、新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった官と財の際立った組織構造と、それを当然と考える日本人の思い込みがあった。経済発展に伴い自信は次第におごり、慢心に変わり始めた。・・・組織の利益を守ることは・・・国民の命を守ることより優先され・・・」と続け、「人災である」と断じています。

 ここに書かれている内容は、筆者にとって全く合点がいくもので、それを堂々と格調高く、歯切れの良い文体で理路整然と書いた文章にも感服しました。

 筆者は、この「国会事故調」報告書に書かれたのと同じ構造が日本国中に蔓延していると感じています。

一部に故障が起きたら全ラインが止まる状態をつくる

 一方で、本稿でお話ししている「本流トヨタ方式」の「自働化」という概念は、現状に甘んずることを厳しく戒め、「今やっていることは拙いやり方ではないか」「もっと良い方法があるに違いない」と絶えず今の仕事のやり方を自問自答し、弛まぬ努力を続けていくことを教えています。

 ここで、トヨタで教材にしている「例題」を紹介しましょう。下の図のように、1号機~5号機を直列に並べて加工するラインがあるとします。1日800個生産する計画だったのに、5号機に故障が多発するようになり、平均で定時内に750個しかできなくなってしまいました。この時、管理者はどうすべきかという問題です。