本来のトヨタ生産方式を説く本コラム「本流トヨタ方式」は「自働化」のお話に入っていて、その17回目になります。

 今回は、先月末から今月にかけてマスコミで盛んに報道された「株主総会」と「原発再稼働」を取り上げ、「自働化」の考え方についてより深く理解していただこうと思います。

電力会社と一般私企業のタイプの違い

 6月末に株主総会が相次ぎました。前々回にお話しした「Aタイプ」(原価に利益を乗せて売値としている企業)である東京電力や関西電力などの、市民感覚からかけ離れた傲慢さがマスコミで報道されました。読者の皆さんも、その企業体質が一般私企業といかに違うかを改めて認識されたのではないでしょうか。

 このような電力会社タイプの企業は地域独占ですから、客に「売ってやっている」という感覚になります。黙っていてもお金が入ってくるし、顔色を窺う相手は、取り締まり当局など特定少数だけです。まさに天下に敵なしです。

 今回も、関西電力は事故の原因究明と対策の有効性を実証しないままに、客への「停電させるぞ」という脅し文句で、思い通り再稼働に漕ぎつけました。橋下徹大阪市長が指摘した「間もなく置き場のなくなる使用済み核燃料の問題」についてはなんら回答をすることもなく・・・。

 「Bタイプ」(利益は「売値-原価-維持費」で計算され、売値も原価も市場で決まる)の一般私企業は、電力会社と対極に位置しています。お客様は不特定多数で、その人たちに選んでいただき、買っていただかないと立ち行きませんから、毎日毎日、誠心誠意尽くすしかありません。

 それゆえ「本流トヨタ方式」では、これまでお話ししたように、「問題点が発見されたらラインを止めて直せ。量は問わない、質を確保せよ!」と説いているのです。

電力を確保するために安全を軽視した官僚国家ソ連

 再稼働と言えば、1978年から営業を開始した旧ソ連のチェルノブイリ原発は、ご存じのように86年、皮肉にも最新設備の4号機の安全試験中に大事故を起こしました。事故原因は単なる操作ミスであるとし、国家としては電力が不足していることを理由に、残った3基の原発を稼働させ続けたといいます。