AsiaX(アジアエックス) 2012年06月22日より

 シンガポール日本商工会議所(JCCI)は、6月21日、「2012年NWCガイドライン説明会」ならびに「2012年賃金調査結果報告会」をマリーナ・マンダリン・シンガポールにて開催した。

 JCCI理事で賃金調査委員長の二瓶清氏が、今年4月から5月にかけて3回にわたって開催された国家賃金評議会(NWC)の会議の内容を元に、今年のガイドラインについて解説した。

 NWCは、政府、労働者、使用者の三者の代表による評議会で、三者による議論を通じて来る1年間の賃金ガイドラインを内閣に提言し、内閣の承認を受けてそのガイドラインが有効になる。シンガポール国民の賃金に関する指針であり、強制力を伴うものではない。

 昨年のガイドラインでは、低賃金労働者対象のインフレ対策として一時金の支給が提示されたが、低所得労働者が所属する会社全体で実施率が4.1%と低かった。これを受けて、今年は全被雇用者を対象とした賃金の引き上げや、月額給与1000Sドル(約6万3000円)以下の労働者に対して最低$50の定額昇給を行うべし、とより踏み込んだ提言がなされている。

 この提言を労働者側は歓迎しているが、経営者側は一律ではなく職務遂行の状況に応じた柔軟性を求めている。また、中小企業の多くは経営不振を招く恐れがあるとして実施について悲観的だという。

 続いて、賃金調査委員を務める岡田昌光氏が、月次可変給(MVC)について説明。MVCは企業の業績が悪化した時に、解雇ではなく予め労使で合意した範囲内で賃金を調整することで業績の立て直しを図るいわば非常手段。MVCの意義や導入のタイミング、実際の運用方法などを具体例を示しながら岡田氏が解説した。

 同じく賃金調査委員の荒屋隆氏は、ここ1年ほどで制度にさまざまな変更があったワークパス事情について説明。エンプロイメントパスの発給条件の変更や、Sパスおよびワークパーミットの各企業での雇用可能数の変更、各企業が負担する人頭税の金額の変更などを詳しく解説した。

 また、昨年12月に改定された各種ワークパスの申請および発行手数料について、変更に伴う留意点などもあわせて解説した。