夢は全米500店舗のおにぎり屋チェーン!

日本人の若者2人が健康和食・Onigillyを発信

2010.05.24(Mon) 佐々木 順子
筆者プロフィール&コラム概要

 ある程度のニーズが確保できると読んだ2人は、手始めにトラックを借りて昼時の市街を売り歩こうと考えた。ところが役所に相談に言ってみると、「和食レストランのある場所から2ブロック以内は禁止」などの規制がある上に、カリフォルニア・サンフランシスコの厳しい衛生基準をクリアするキッチン付きのトラックを準備してライセンスを取得するには、初期投資で15万ドル(1ドル=90円換算で1350万円)もの大金が必要なことが分かった。

 大都市では手軽に食べられる屋台やトラックで売り歩くストリートフードが人気だが、サンフランシスコは出店規制が極めて厳しい。その結果、違法営業が多く、高額な家賃や税金を払って経営するレストランから「不公平だ」と強い反発が出ている。

南米移民女性の支援団体からのサポート

 「トラックがダメと分かって、ちょっとへこみましたね。他の方法を色々と考えて、これはキッチンを借りて、ケータリングでいくしかないと思った」。兼松さんは rental/ commercial/ kitchen などのキーワードでネット検索してみた。そこで「ラ・コシーナ」という施設の存在を知る。

フードビジネスの起業を支援する「ラ・コシーナ」 スペイン語でキッチンの意味

 「ラ・コシーナ」はスペイン語でキッチンの意味だが、説明会に行ってみると、単なるレンタル・キッチンではなく、フードビジネスの起業を支援するNPOだった。主に南米からの移民女性を対象に、開店に必要な法律知識から店のイメージ戦略まで、あらゆる側面から創業をサポートする組織だ。

 プログラムディレクターのカレブ・ジガスさんは「コージ(兼松さん)とカン(長谷川さん)のプレゼンを聞いて、商品コンセプトが素晴らしいと感じた。2人のやる気や志も間違いないと思ったので、男性だったけれど、迷わずに特例として受け入れを決めた」と言う。

 「ラ・コシーナ」の起業家たちは、ビジネスを構想具体化するプレインキュベーション期→実際に商品を作り販売するインキュベーション期→ビジネスとして一人前になり利益を上げるようになった卒業期と段階を踏んで、独り立ちしていく。

 例えばメキシコからの移民、ベロニカさんは、当初、自宅で本場の料理を作り、違法と知りつつ街角で売っていた。客の1人が「ラ・コシーナ」のことを教えてくれたという。

 南米の文化では、女性が本格的に仕事をすることが、しばしば家庭に緊張を生む。当初は夫に「女が事業経営だと? やるなら出ていけ」と怒られたこともあったが、必死で説得した。「ラ・コシーナのスタッフは一貫して You can do it!(あなたならできる!)と励まし続けてくれた」と語る。現在はインキュベーション期の起業家のひとりとして、ファーマーズマーケットなどで伝統料理のグルメブリトーなどを販売している。

 「ラ・コシーナ」を設立したのは、ミッション地区のバーや路地で食べ物を売り歩く女性たちの姿を見た女性篤志家(匿名の政治活動家)だ。

 総面積380平方メートルのキッチンとオフィスに、最新の調理施設と4つの調理ステーションを完備した。採光、エネルギー効率など、グリーンビジネスの基準に沿って、女性建築家が設計した。

 料理は土地や文化に根ざしたものだ。多様な民族が集う地域には、多様な食べ物で起業できる可能性を持つ人が住んでいる。また、家計を助けるために法律をかいくぐって食べ物を売って小銭を稼いでいる女性たちの中には、合法的な事業主となり、経済的に自立して、地域社会に貢献できる能力を秘めている人がいる。彼らの手助けをするのが、「ラ・コシーナ」のミッションだ。

NPOが起業までを手厚く指導

 プレインキュベーション期には、起業家たちはマーケティング、商品開発、経営、経理、法律など様々な授業を受け、課題をクリアすると修了する。講師は、様々な分野の専門家から成るボランティアだ。

 「米国の飲食業について、分からないことだらけだったので、とても勉強になった。例えばアルコールライセンスの取得ひとつとっても、日本よりも手続きが煩雑。そうした法規について、その分野に詳しい弁護士が講義してくれたり、プロのフードライターが商品コピーの書き方を教えてくれたり、とても親切に指導してくれた」と兼松さんは言う。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

コピーライター、編集者を経て、2007年より米国サンフランシスコ在住。事業視察やテレビ番組のリサーチャー/コーディネーターも務める。テクノロジーによる社会のイノベーション、CSRや社会起業に特に興味がある。執筆NPO法人「ufp」会員。


USA

20世紀の世界秩序を築いてきた超大国、米国が揺らいでいる。世界はこのまま多極化へと向かうのか。政治、経済、金融、外交、軍事…。豊富なネットワークと独自の情報網を持つ執筆陣が、米国の現状と今後についてあらゆる角度からJBpressならではの切り口で論じる。