中国大使館元一等書記官のスパイ疑惑が大きな波紋を呼んでいる。今回の『中山泰秀のやすトラダムス』(Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)では、中山氏がこの事件をめぐるニュースを解説したほか、原発再稼働問題について提言を行った。

李元一等書記官のスパイ疑惑も内閣改造の理由のひとつ?

中山 先週来、世間を騒がしているニュースのひとつに、在日中国大使館元一等書記官のスパイ疑惑があります。この件について、産経ニュースに「中国スパイ疑惑 国会は農水相ら追及せよ」という記事がありました。

李春光元1等書記官も在籍していた松下政経塾(ウィキペディアより)

 松下政経塾に在籍していたこともある李春光元一等書記官は、外国人登録法違反(虚偽申請)などの容疑で警視庁から書類送検されましたが、一時帰国後は再三の出頭要請にも応じず、不起訴になる公算が大きいと見られています。この件で、玄葉(光一郎)外相は中国に抗議したことを明らかにしました。

 また今回の事件で、鹿野(道彦)前農林水産相や筒井(信隆)農水副大臣らが進めていた日本の農産物の対中輸出事業に、元書記官が深く関与していた疑惑も浮上。元書記官は鹿野氏らとしばしば接触し、副大臣室にも出入りしていたようです。

 このタイミングで野田(佳彦)総理は、鹿野氏への追及が行われる前に閣僚の新人事を決定しました。つまり、責任追及を免れようとしているとも取れる内閣改造を行った。

 自民党・公明党をはじめとする野党も馬鹿ではありませんから、国会で徹底追及するのは間違いないでしょう。その追及を鹿野氏に、現職閣僚ではなく一民主党議員として受けさせようというのが野田総理の狙いではないでしょうか。

以前にもあった、帰国したスパイを逮捕できない事件

 また、李元一等書記官が関与していた中国への投資話に日本企業約10社から計約2000万円が集まり、同書記官が研究員を務めていた研究団体関係者に渡っていたことが捜査関係者への取材で明らかになっています。

 その後、資金は使途不明になっているとのこと。李元書記官は中国人民解放軍総参謀部の情報機関「第2部」所属とされ、警視庁公安部はこの資金が軍部に渡った可能性もあると見ているそうです。

 見逃してはならないのは、李元書記官が書類送検されたのが、日本を脱出して中国に帰国した後だということ。スパイが日本国内にいる間は泳がせておいて情報を取ることも大事ですが、中国に帰った後に逮捕できないのでは元も子もありません。

 実はこれと似た事例があります。それは、日本人拉致問題の生き証人である辛光洙(シンガンス)容疑者が1980年に起こした原敕晁さん拉致事件です。