北半球の5~6月は1年で最も心地よい季節。日本では皐月(旧暦)は春から初夏に向かう爽やかな季節だが、その後の旧暦5月は五月雨。今日では6月半ばから1カ月あまりにわたって梅雨となり、梅雨が明ければ夏。だから6月が美しい季節、という通念はあまりない。でも西欧主要国においてはまさに陽光鮮やかで、暑すぎず、爽やかな気候が続く時期であり、「ジューンブライド(6月の花嫁)」というのもそこから来ていると聞く。

 もう1つ、6月は夏至に向かって1年の中で最も日照時間が長い時期であり、そのためかつて照明をはじめとしてクルマの信頼性そのものを試そうとした時代、この季節に長時間の自動車競技を開催するようになった。その伝統が受け継がれているのが「ル・マン24時間」レースであり、毎年「夏至直前の週末」に開催されている。

 誰が言い出したのか、日本ではこのル・マン24時間とともに「世界の3大レース」と称されているのが、「F1(フォーミュラワン)モナコ・グランプリ(GP)」と、アメリカ独自のフォーミュラマシンで戦われる「インディアナポリス500マイルレース」(「インディ500」と略されることも多い)である。

同日開催のモナコGPとインディ500を「リビングルーム観戦」

 この2大イベントは、5月末に開催されるのがこれも伝統になっている。特にインディ500は5月の最終月曜日に制定されている「メモリアルデー」、すなわち「戦没将兵追悼記念日」の前の週末、というのが決まりごと。

 最近では例年、大西洋をはさんで同日に決勝レースが行われる日程が組まれている。今年もそうで、私もこの日(5月27日)はCS放送によるテレビの生中継に加えて、インターネット上に公開されているそれぞれのリアルタイムデータ、つまりその周回での順位、ラップ(周回ごとの)タイム、各車が走っているコース上の位置、出来事の文字情報などを伝えるウェブサイトや、F1の場合はデータ端末向けのアプリを表示させたパソコンやタブレットを並べて「リビングルーム観戦」体制を整えた。

 同じ日に日本では九州のサーキットで「フォーミュラ・ニッポン」のシリーズ戦もあり、午後はその生中継を見て、時差7時間(現地は夏時間)で夜はF1モナコGP、さらに6時間の時差を加えてインディ500と、明け方までの長時間観戦の1日となったのではある。

 実は、サーキットの現場にまで足を運んでも、限られたカメラマンを除く報道関係者はメディアルームと呼ばれる大部屋で、テレビの中継映像、周回ごとの順位とラップタイムのそれぞれを表示するモニターがずらっと並んでいる中に陣取って、そこで起こっていることを見守るのが「レース中のお仕事」になってしまう。そういう意味では、いまや遠隔観戦でもそれと大差ない、いやうまく組み立てればそれ以上の観戦環境が整ってしまう。そういう時代になった。