5月7日にシリアで人民議会選挙が行われた。ダマスカスの現政権は、新憲法の下で初めて実施された「複数政党制の議会選挙」だと胸を張った。

シリア停戦の国連監視団、先遣隊が到着

シリア政府軍によって破壊された町〔AFPBB News

 一方、米国務省はこれを「滑稽に近い(borders on ludicrous)」と論評、国連の潘基文事務総長も「シリアの現状は耐え難い(intolerable)」と扱き下ろした。

 欧米マスコミは、一昔前のサッダーム、昨年のムバーラク、カッダーフィに続いて、今やシリアのバッシャール(アル・アサド)大統領を「悪の権化」に仕立て上げているかのようだ。

 果たしてバッシャールは報じられるほどの「極悪人」なのか。今回は「シリア」と呼ばれる地域の重要性について考えたい。(文中敬称略)

混乱が続くシリア情勢

 確かにシリアでは今も混乱が続いている。本年4月以降だけを見ても、1日にイスタンブールで「シリア友好国会合(friends of Syria)」が開かれた。米国など83カ国が参加し、反政府の「シリア国民評議会」をシリア人の正統なる代表と認めたそうだ。当然ながら、この会合にロシア、中国は参加してない。

 前国連事務総長のアナン国連・アラブ連盟特使とシリア政府が合意した停戦期限は4月10日だったが、現在に至るまで暴力の連鎖は続いている。

 19日にはパリで再び「シリア友好国会合」が開かれ、参加国の間では「シリアが停戦を遵守しなければ、更に制裁を強化すること」などが議論されたという。

 米国や一部欧州諸国は、このままでは武力行使の可能性を含む国連憲章第7条に基づく措置も検討せざるを得ないとの考えを表明。さらには、これまで沈黙を守ってきたイスラエルの政治家たちも、最近バッシャール政権の崩壊について公然と発言する場面が増えているという。

 どうやら国際社会は寄って集ってバッシャール政権打倒に向け圧力を強めているようだ。

 現政権に批判的な勢力には、欧米諸国はもちろん、トルコやエジプトに加え、サウジアラビアの意向を受けたカタルまで、イランと中露を除く、多くの主要国が含まれる。バッシャール政権は最早風前の灯なのかもしれない。