北朝鮮がミサイルを発射する → 日本に落ちる可能性がある → なんて恐ろしいことだ!

 なにやらそんな雰囲気になってきている。北朝鮮が予告したXデーは4月12~16日。そこで日本政府は、日本の領土・領海にミサイルの本体や部品が落ちてくる場合に、それを撃ち落とす「破壊措置命令」を出すことを決定。3月27日には田中直紀防衛相がその準備命令を下命した。

 それを受けて、自衛隊は「ミサイル防衛」(MD)を実戦モードでスタンバイすることになった。具体的には、飛翔予定コースに近い東シナ海などの海上に、MD対応のイージス艦3隻を展開するとともに、沖縄本島、宮古島、石垣島に地上配備型の弾道弾迎撃ミサイル「PAC-3」を一時配備する。念のため、首都圏でもPAC-3を展開させるという。

 さらに、ミサイル発射の情報はすかさず「Jアラート」(全国瞬時警報システム)という速報システムを通じて全国の自治体に伝えられることにもなった。これで日本全体が北朝鮮ミサイルの飛来に備える態勢が整う。こうした措置が連日報道され、それが日本国内での緊張感を否応なく高めている。

 だが、ちょっと待ってほしい。北朝鮮が国連安保理決議や米朝合意に反したロケット打ち上げを強行し、東アジアの安定を脅かしているのは事実だが、だからといって、上記のような大仰な日本の反応は、冷静に考えると、かなりおかしい。

 北朝鮮のミサイルが日本国土に落ちるだろうと本気で思っている人間など、筆者の知る限り防衛省・自衛隊には1人もいない。ほとんどの関係者は、この臨戦態勢ぶりに「なんだこれ?」と内心では奇異に感じているはずである。

 つまり、日本が実害を受けるなどということは、万が一もないほどの低い確率だということをほとんどの関係者は分かっているが、想定外だからといって準備を怠れば、どんな非難を受けるかも分らないので、国内向けのパフォーマンスとして、破壊措置命令などという話になっているに過ぎないのだ。

まったく理解できない「PAC-3」の配備

 もちろん北朝鮮の暴挙は非難されるべきだが、だからといって方向違いの過剰反応で、国民を不安にするのもいかがなものか。北朝鮮の何が日本にとっての脅威で、何が脅威でないのかは、具体的にきちんと検討すべき問題であろう。