北米報知 2012年2月15日号

 2000年度後半まで1ドルあたり100円強だった日本円が、2010年後半から約1年にわたり70円台半ばを推移している。記録的な円高は様々な形で日本経済に影響を及ぼしており、当地における日本人生活者も様々な問題に直面している。

生活への影響、留学生には「恵みの円高」

円高で日本からの輸入品は大きく値上がりしている

 シアトル生活が長い日本人関係者にとって、長引く円高は食卓への影響はもちろん、日本との距離そのものを遠ざけてしまっている。

 日系マーケットなどで販売される日本商品の物価高に頭を悩ませ、日本を訪問しても滞在費が割高となり、帰国しにくい状況に直面しているためだ。

 日本への出張が多い在住者の話では、急激な円高で「数年前までの1ドル=約100円」という感覚が抜け切らず、米国で使用するカードを利用した際に、数年前とは比較にならない請求額になることがあるという。

 一方、留学生は円高でかなりの恩恵を受けることになる。「授業料支払いの際に一番円高を実感します」と話すのはベルビューカレッジに通う黒崎えり子さん。ベルビューカレッジは1学期に15単位分の授業を受講した場合、留学生の学費は約6000ドル。1年4学期を通った場合に2万ドルを超える計算になる。

 2007年7月段階では1ドル124円台。今月は常時76円台となっており、同カレッジに通う私費留学生の学費では1年あたりで、日本円で、5年前と比較して96万円の差が出ることになる。

地元企業への影響

 日本商品を多く取り扱う地元日系マーケット宇和島屋では、取り扱い商品に大きな変化が見られる。

「1ドル100円時からおよそ25パーセントの円高になり、それに併せて日本からの商品も25パーセント値が上がりました。現在、20パーセントほどを、割安な中国製や韓国製など、代替製品にシフトしています」と食品輸入を担当する渡部さんは話す。

 消費者が反応を見せる値上がりに対しては、「当店もNPOではないので、外圧があれば値段を上げざるを得ない」という。

一方で、日本食品類の多くが米国の販売標準をクリアするため、その商品検査や製造工場の認定などの設備投資を余儀なくされ、想像以上の物価高が引き起こされていると続けた。