「インテリがつくってヤクザが売る」。かつて「新聞」という商品について、こんなふうに言われたことがある。

 大卒で国政や世界経済をときに論じる記者、編集者という“インテリ”(?)が紙面制作に携わる一方、新聞販売の現場では、拡張員が洗剤などを“おまけ”につけて勧誘、断るとなかにはヤクザまがいに強面で執拗に迫るといった例が多発し問題になった。

 これが「インテリ、ヤクザ」の図式だが、原発と原発労働者の関係について考えるときこの言葉を思い出す。

過酷な環境下で働かされる原発労働者

 もちろん原発労働者がヤクザまがいだなどということではなく、高度な科学技術や知識を有するエリートたちが推進する原発とその原発を現場で支える労働者の置かれた立ち場、環境の落差が、「インテリ、ヤクザ」の図式に通じるものがあると感じたからだ。

労災認定の記者会見を終えてほっとした大角カニカさん(右)と大橋弁護士(左)=静岡県庁で

 原発の建屋内で作業する労働者が、過酷な環境の下で働いてきたことは周知の事実であり、それが複雑な下請け構造のなかで成り立っていることも知られている。今回の原発事故の収束作業は、より厳しい環境のなかだったことは言うまでもない。

 福島第一原子力発電所事故後の収束作業にあたっていた労働者のうちこれまで4人が亡くなっている。昨年5月が一番最初で、当時60歳の大角信勝さん(静岡県御前崎市)が心筋梗塞で亡くなった。

 2カ月後、この死は仕事が原因の労災であるとして、遺族である妻が労災認定の申立を行ったところ、2月24日、申立を受けた横浜南労働基準監督署は、大角さんの死が短期間の過重労働による過労死であったとして妻に遺族補償年金を支給することを決定した。

 原発の収束作業中の死としては初めて労災として認められたこの事件では、大角さんの妻カニカさん(53)が、日本語の読み書きが不自由で、労災など日本の社会制度にも疎いタイ人であることや、大角さんの死亡後、彼が直接雇用されていた4次下請けのD社社長が「50万円」の見舞金で“片を付けよう”としていたことが報道されるなどして「労災隠し」の疑いが問題となった。その意味で、今回の労基署の決定は、結果として適正な判断という印象を与えた。

 判断の根拠について、カニカさんの代理人である大橋昭夫弁護士は「防護服、防護マスクを着用した不自由な作業環境の中での精神的緊張を伴う業務と死亡との間に相当因果関係があり、仮に、大角さんに高血圧などの基礎疾患があったとしても、短期間の過重業務が、自然の経過を超えて、急激に悪化させた」と説明した。

 脳や心臓疾患による死は、短期間の過重業務でも過労死として認定されることがあり、死亡直前の大角さんの実作業も2日間で計4時間弱と短いが、過重業務と認められたことになる。