「AIJの問題点を挙げる前に、お前のところもAIJのような運用成績が出せるようになって出直してこい!」

 「AIJこそが、運用会社の鏡だ!」

 多くの年金運用者が恐れていたことが現実化しました。しかしながら、投資していた多くの日本の年金基金の担当者は「恐れて」さえもいなかったのかもしれません。直前まで冒頭の言葉を年金基金の担当者は、多くの運用会社に浴びせかけていたのですから・・・。

神様以外にはあり得ない運用成績

 AIJが悪いのは当然です。運用成績の虚偽報告が許されるはずがありません。実際、AIJは毎月コンスタントに0.5%以上のリターンを稼いで、年間10~20%の運用成績を「表向き」には出し続けていました。

 5年程度預ければ投資資金が2倍になるのです。そして、驚くことに運用成績は、2008年に起こったリーマン・ショックの前の月も、起こった月も、その翌月も0.5%程度のプラスが毎月続いたのです・・・。

 問題であるのは、投資知識がある人であれば、こうした運用成績が不可能であることに気付くはずなのに、プロであるべき年金基金運用担当者がこうした運用成績を信じAIJに投資したこと。

 運用例を挙げて説明してみましょう。運用者がリーマン・ショックのような金融危機を予測し、クレジット債券を危機が起こる前に売り持ちにすることと想定します。

 この場合、起こるまではマイナスの運用成績が続きますが、金融危機が起こった時に大きなプラスのリターンを取ることができるのです。

 一部欧米のヘッジファンドはこうした手法を採り、リーマン・ショック直前まではマイナスの運用成績が続きましたが、起こった日から非常に大きいプラスの運用成績を出すことに成功しました。

 しかしAIJの運用成績のようにリーマン前後も含めてプラスというのは、金融市場の動きをすべて見通せる神のみぞ可能です。