2009年に中国で一世を風靡したテレビドラマ「蝸居(かきょ)」が台湾でも注目を集めている。

台北市内では至る所でマンションの広告を目にする(筆者撮影)

 「蝸居」は、不動産バブルに沸く中国の都市部で、カタツムリ(蝸)の殻のような小さなマンションを高値でつかまされ、住宅ローン地獄に苦しむ若い夫婦の悲惨な暮らしをリアルに描いたもの。

 2009年後半から台湾も首都圏で不動産価格が急騰しており、もはや、対岸の火事とは言えない状況。中国返還前に香港で出現した「返還バブル」を彷彿させ、深刻な社会問題になっている。

 不動産価格の上昇は止まるところを知らず、庶民にとってマイホーム購入はますます手の届かない夢となりつつある。政府の住宅政策に対する不満が高まっているものの、政府は有効な手立てを打ち出せていないばかりか、むしろこれをあおる結果になっている。

マイホーム価格は平均年収の26倍

台北市内の不動産屋に貼り出された物件紹介のビラ。不動産ブームで不動産屋が急増しているという(筆者撮影)

 人材派遣会社大手の「1111人力銀行」が台湾全土の会社員を対象に最近実施した住居に関するアンケート調査によると、持ち家があると回答したのはわずか22%。このうち、最も多い職種は建築・不動産仲介業で、サービス業が最も少なかった。

 持ち家率が低い原因は、ひとえに住宅価格の高さにある。調査によると、20年前に平均年収の5.5倍だった住宅価格は、26倍に跳ね上がった。飲まず食わずの生活を最低でも26年間送らないと、マイホームを買えない計算だ。このため、65%の人が「当面は家を買うつもりはない」と回答しているのもうなずける。

 仮に、マイホームを思い切って買ったとしても、月々のローン返済額は平均で給料の4割近くになっており、ローン地獄ぶりが浮き彫りとなった。

「ECFA」であおられる先高感

 台湾の不動産高騰の要因は多様かつ複雑だ。ただ、その最大の要因は対岸の中国との関係に求められる。