前篇の「お勉強大好き日本企業、中国で欧米の後塵を拝す」に続き、日本の不動産デベロッパーの中国参入について、リーマン・ショック後から今にいたる動きを追い、今後を展望する。

火がついた日本の不動産開発企業

上海の虹橋エリアにそびえる高級マンションの仁恒河濱花園 (著者撮影、以下同)

 機関投資家が積極的な投資姿勢を見せていた時期が過ぎ去り、これまで「勉強」で終わっていた日本の不動産開発企業が再び動きはじめた。

 金融危機、リーマン・ショックの影響から経済の先行きの不透明感が一気に日本を包み、日本の不動産開発企業の中に危機感が募るようになってきた。

 人口が減少する日本では住宅需要が見込めなくなるのは時間の問題であり、長期的な視野を持って海外で活路を見出さなければならなくなった焦燥感と言ってもいい。

 これまで日本の不動産開発企業の間にあった「巨大な市場を狙ってみたい」という希望的観測が、「中国という巨大な市場を狙わなければならない」という切羽詰まった状況に一変したと言える。

 これは、筆者が従事してきた調査業務の内容の変化でも見て取れる。リーマン・ショック前までは、「中国市場について概略が分かるような調査をしてもらいたい」という要望がほとんどだったが、最近は「ある都市のこのエリアの住宅市場について具体的な事例データが欲しい」という要望に変わった。

 「勉強」から「具体的案件の検討」への変化である。「もう勉強だけでは許されない」、そのような危機感が筆者にひしひしと伝わってくる。

 これまで勉強してきたのか、これから勉強するところなのか、という中国投資に関する企業にとってのステージはもはや関係ない。起死回生のチャンスとして中国市場を狙う日本の不動産開発企業の勢いが増してくるだろう。

競争の激しい中国市場で生き残れるか?

 製造業が「世界の工場」に加えて「消費市場」としての中国を認識するようになったのは、かれこれ数年前だと思う。ようやく日本の不動産開発企業も動き出した。

 もちろん、世界経済が混迷を深める中、中国市場も例外なくリスクを抱えている。

 しかし、たとえ市場で大幅な調整が見られたとしても、膨大な人口を抱える中国で、不動産に対する需要そのもがなくなる、ということはないという認識が根底に根づいてきた。