金正日総書記が死去、心筋梗塞 北朝鮮国営メディア

心筋梗塞で亡くなったと報じられた北朝鮮の金正日総書記〔AFPBB News

 北京発の共同通信記事によれば、朝鮮中央通信は19日、北朝鮮の最高指導者で国防委員会委員長の金正日総書記=朝鮮人民軍最高司令官=が17日、現地指導に向かう列車の中で死去したと報じた、とのこと。急性心筋梗塞を起こしたとしている。(敬称略)

 北朝鮮は独自の社会主義体制の支柱を失い、準備期間が不十分な中、後継者の三男、金正恩を中心とした統治体制確立の帰趨や核・ミサイル問題の行方が焦点となろう。

 金正日の死去を受け、外国為替市場で韓国の通貨ウォンが急落したほか、韓国は直ちに緊急警戒態勢を宣言した。

 事態のインパクトの大きさを物語るものだ。日本など周辺国を含めた東アジア情勢が重大な岐路に立たされるのは必至だろう。

朝鮮半島の地政学

 朝鮮半島の歴史においては、このように、強大な大陸国家と海洋国家が半島内の相対立する2つの勢力と結びついて、「角逐」する現象が見られた。朝鮮半島において、このように2つの勢力が角逐を繰り返す淵源はなんだろうか。それは地政学のなさしめるものだと思う。

 地政学とは、分かりやすく言えば地球上で占める国家の位置がその運命を左右するという考え方である。家の建つ位置が、その家の吉凶を左右するという考え方を「風水」と言うが、地政学は「国家の立地を地球規模で見る風水学」とでも言う方が分かりやすいだろう。

北朝鮮の故・金正日総書記、辣腕ふるった非情な支配者

最高指導者就任前の金正日〔AFPBB News

 地政学的に見れば、朝鮮半島は、ユーラシア大陸に出現する大陸国家と太平洋に出現する海洋国家のせめぎ合いの場である。

 現在、朝鮮半島は大陸国家の両雄である中国・ロシアと海洋国家の米国・日本の挟間に位置している。ロシアと中国にとって朝鮮半島は、日本を経て太平洋に進出する足がかりになる。

 一方、米国にとっては東アジアに進出する足がかりの1つ。従って、朝鮮半島は、日本、米国、中国、ロシアのいずれにとっても、国益や安全保障戦略上極めて重要な価値がある。それゆえ朝鮮半島は、大陸国家と海洋国家の「角逐の地」になるわけだ。

 韓国・北朝鮮の立場から見れば、世界最強の大陸国家と海洋国家の狭間にあることで、遺憾なことに、常にこれら大国の覇権争いに巻き込まれ、国の運命を翻弄されるという宿命を背負うことになる。カントリーリスクと言われるゆえんだ。

 朝鮮半島の地政学はこれだけではない。もう1つの地政学。それは、半島がユーラシア大陸の両雄であるロシアと中国両国に陸接していることに由来する。

 ロシアと中国は現在仲良くしているが、実は戦略的には永遠のライバルである。ロシアか中国の一方が、朝鮮半島を自国の影響下に置けば、北東アジア正面で圧倒的に有利な戦略態勢を確立することになる。