エコノミストの眼

グリーンスパン氏が「炭鉱のカナリア」発言長期金利上昇を警戒

2010.03.30(火)  上野 泰也

グリーンスパン前米連邦準備理事会(FRB)議長は3月26日のブルームバーグテレビで、このところの米国債利回りの上昇は「炭鉱のカナリア(a canary in the mine)」のようであり、今後のさらなる上昇のシグナルかもしれない、とした。連邦政府が抱える未曾有の巨額債務に対する投資家の懸念を国債利回りの上昇は反映している、と同氏はコメント。自分は財政状況を非常に懸念しており、長期金利の上昇は住宅投資の回復を困難なものとし、設備投資にも下押し圧力になる、と説明した。

 ここで出てきた「炭鉱のカナリア」という言い回しは、英文の経済記事で最近しばしば目にするものである。ブルームバーグの邦訳記事に解説がなく、この言い回しが載っていない英和辞典も少なくないので、ここで解説しておきたい。

 「炭鉱のカナリア(a canary in a coal mine と書かれる場合が多い)」とは、かつて炭鉱労働者が坑道の中にカナリアを持ち込んで、採掘作業を続けていても空気の面で安全かどうかを知る手がかりにしたことに由来する。酸素が十分あり、有毒ガスが流入していないなら、カナリアは元気な姿で鳴く。カナリアは暗いところでも目立つ色をしているので、目で見る場合でも状況が分かりやすい。しかし、一酸化炭素やメタンが空気中で増えると、これらのガスに敏感なカナリアは鳴かなくなり、ついには死んでしまうので、炭鉱労働者たちは危険の存在を察知して、坑道から退避することができる。つまり、「炭鉱のカナリア」というのは、近い将来起こる危機についての「早期警戒信号」ということである。

 グリーンスパン氏が言及したのは、財政赤字膨張・政府債務累増という有毒ガス(悪材料)が債券市場を覆うようになると、長期金利が「悪い上昇」を起こして、実体経済に悪影響を及ぼしてしまうことへの、強い懸念である。3月25日の米債券市場では、国債入札不調を悪材料に、米10年債利回りは一時3.92%まで上昇した。これは同利回りが4.00%を記録した2009年6月11日以来の高水準である。グリーンスパン氏は、「米国の政治と、いま起こっていることを、私は好まない」「連邦政府の債務とわれわれの借りる能力との間にはバッファー部分があったが、それが縮小しており、将来を見通して心配せずにいるのが、私には非常に困難だ」とも述べた。

 では、FRBの現役組は、直近の米債券相場や財政状況をどのように見ているのだろうか。

 バーナンキFRB議長は3月25日に下院金融サービス…
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