(2010年3月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
国際貿易の世界を取り巻く雰囲気が熱を帯び、グローバルな貿易戦争を盛んに叫ぶ声が高まっている。一部の観測筋は不安げに、世界的な戦いを勃発させかねない、フランツ・フェルディナント大公暗殺に相当する出来事が起きるのではないかと事態の展開に目を凝らしている。
実のところ、みんな深呼吸をして、冷静になった方がいい。特に通貨の問題に関しては、衝突が起きる可能性があることを否定するのは馬鹿げた行為だが、今のところ我々が目にしている動きは、貿易摩擦に対応するお決まりの手順にすぎない。
確かに米中両政府は、人民元相場を低く抑える中国の為替政策が世界的不均衡の原因かどうかを巡って激しい非難の応酬を繰り広げている。だが今のところ、ワシントンの弁護士ゲイリー・ホーリック氏が言うように、「米中間には、通貨に関して(法的な)抗争を始めない、そして、弁護士にはそれ以外の問題に取り組ませるという暗黙の了解があるようだ」
最後の点は極めて重要だ。人騒がせなことをしたければ、世界の貿易大国――とりわけ米国――が今、様々な訴訟と論争に巻き込まれていると主張できるだろう。
貿易摩擦は確かに起きているが・・・
つい先週は、ブラジルが再び米国に貿易制裁を課すと警告した。これは、米国の綿花補助金を巡る世界貿易機関(WTO)訴訟でブラジルが勝訴したことを受け、WTOに承認された制裁措置だ(米国はまだWTOの決定に従っていない)。
昨年は、メキシコの輸送用トラックが米国内を通行できるとした北米自由貿易協定(NAFTA)の裁定に米国が従わないことを巡って、メキシコが同様の制裁を米国に課している。
米国政府と中国政府の間でも訴訟が起きており、中国は米国産の鶏肉製品に反ダンピング税を課して輸入を阻止。中国製タイヤに緊急輸入制限(セーフガード)を発動したバラク・オバマ大統領の判断についてもWTOに提訴している。
一連の紛争は恐ろしい事態のように見えるかもしれないが、実はごく普通の出来事だ。反ダンピング課税などの貿易制限措置の利用はかなり控えめで、WTOなどの国際機関が先週発表した監視報告書によれば、そうした措置の増加ペースは昨年末に鈍化している。
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