(2010年3月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
「欧州通貨基金(EMF)」創設構想を公に支持したヴォルフガング・ショイブレ財務相〔AFPBB News〕
ドイツの財務相が公に、財政難に陥ったユーロ導入国を救済できる「欧州通貨基金(EMF)」創設構想を支持したということは、それだけで十分驚くべきことである。何しろこれは、ユーロ圏内で「救済」を禁じ、緩い財政規律を絶対に認めないというドイツの根本原則に違反しないまでも、それを曲げるように見える。
もちろん、ヴォルフガング・ショイブレ財務相が先週末持ち出した構想は諸刃の剣だ。新基金は国際通貨基金(IMF)と同じように、個々の国の財政政策に厳しい条件をつけ、介入する手段を持つ。ドイツの観点からすると、まさにそれが主目的となる。
だが、同じくらい驚くべきことは、EMF創設構想と、対策の詳細は定かでないがユーロ圏内での経済政策の協調強化を約束する動きが、フランス政府ではなくドイツ政府から出てきたという事実だ。
通常、欧州連合(EU)内で壮大な夢物語を掲げるのは、いわばフランスの特権だ。ドイツの伝統はそれよりはるかに慎重で、フランスの「果敢な前進」は苛立ちをもって受け止められる。だが、ドイツ政府が賛同して初めて、計画が実現するのが常だ。結局、EU創設メンバーの2大大国が見解の相違を埋めて手を打たない限り、欧州の大きな取り組みは始まらないのだ。
EU加盟国が少なかった時は特にそうだった。拡大したEUにおいては、仏独両国の協力は前進のための必要条件ではあるが、必ずしも十分条件ではない。
英国人などは「仏独枢軸」と呼ぶけれど・・・
この魔法のサークルの外にいる人、特に英国人はしばしば、ドイツ政府とフランス政府の緊密な関係に疑いの目を向ける。両国は伝統的に、ヘルムート・コール元首相とフランソワ・ミッテラン元大統領の時代と同じようにEU統合に猛進していると見られている。
とりわけ英国人が何かと「仏独枢軸」と呼ぶ傾向(これは第2次世界大戦中の悪名高い日独伊の枢軸国を想起させるため、ドイツでは極めて不快な言い回しとされる)は、少なくとも英国においては本能的な敵意を浮き彫りにするものだ。
だが、現実はこれよりはるかに複雑だ。というのもフランスとドイツは大抵、本能的に柵を挟んで反対側の立場を取るからだ。両国がそうあり続ける限り、欧州ではいかなる交渉もまとまらない。
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