(英エコノミスト誌 2010年3月6日号)
大半のヨーロッパ人は自分たちが考えているよりうまくやっているし、今後、緊縮財政を受け入れる余力もある。
いとこ同士の2人がいるとしよう。1人は欧州大陸、恐らくはフランス辺りの出身だ。心気症を患っているため、ストレスや疲労感、原因不明の痛みなど、漠然とした数々の症状に悩まされ、薬を山ほど服用している。虚弱体質の自分にとって、激しい運動は健康を脅かすものだと確信している。
もう1人は米国人(あるいは英国人でも、好きな方を選ぶといい)で、過激なスポーツに夢中のリスクテーカーだ。長年にわたって暴飲暴食を繰り返しているにもかかわらず、医者にも行かず、自分は雄牛のように丈夫だと思い込んでいる。そして2008年、ジョギング中に激しい心臓発作で倒れる。
フランス人のいとこにとっては、これで奥深い真実が証明されたことになる。すなわち、運動は体に悪いということだ。
ここで、「運動」を「自由市場での競争」に置き換えてみると、今回の金融危機を巡って欧州諸国が繰り広げる議論になる。今、どうしたら市場の不安定性に対処できるかという真面目な議論が、より単純な寓話に取って代わられている。現在、あまりに多くの有権者が、今回の信用収縮はグローバリゼーションが良くないことを証明したと信じている。
ニコラ・サルコジ仏大統領をはじめ、多くの政治家がグローバリゼーションを嫌う国民感情に賛意を示している〔AFPBB News〕
そして、あまりに多くの政治家が、喜々としてこうした意見に賛意を示している。フランスのニコラ・サルコジ大統領は今年1月、有権者とのテレビ討論で、自国の自動車メーカーであるルノーがトルコで新車の生産を計画していることを非難し、「フランスで売られる車を外国で作るという道理は認めない」と述べた。
もっと最近では、ユーロ圏内の弱い部分に目をつけた投機筋を非難する政治家も現れている。ルクセンブルクの首相で、ユーロ圏財務相会合「ユーログループ」の議長を務めるジャン・クロード・ユンカー氏は、各国政府は市場に対する「政治の優位性」を示さなければならないと言い放った。
さらに同氏は、政府は「地下室に拷問道具」を持っており、いつでもそれを「示す」用意があると発言し、その場を凍りつかせた。
欧州理事会の議長(欧州連合=EU=大統領に相当)に就任したヘルマン・ファンロンパイ氏の演説はもっと思慮深いものだったが、中国やインド、ブラジルといった新興国の経済力が政治力に変わりつつあり、それを目の当たりにした欧州の人々は「不安」を覚えていると指摘した。
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