精密石材加工や舶用製品、トンネル掘削機などの各種産業用大型機械メーカーの関ケ原製作所。量産品とは対極の製品を名人芸で作り上げていく技術力が誇りの企業であり、その技術力が広く認められ、60年間の歴史の中でも特にここ数年は急成長を続けている。

苦境の打開が“学習企業”に変えた

 しかし、過去にはオイルショック後の造船不況、プラザ合意後の円高不況などの荒波を受け、何度か経営危機に陥ったこともあった。

 そうした苦境を乗り越えるために、矢橋昭三郎氏(現会長)が社長として決意したことが、「明確な企業理念の下、環境変化に合わせて進化し、時代に適応する “学習企業” になる以外、道はない」ということだった。

 それ以来、経営の重点を「生きることは学ぶこと、学ぶことは変わること」に置き、技術・人間性の向上を図り続けて今日に至っている。そして、従業員一人ひとりが「オンリーワン・ナンバーワン」を目指すことも標榜している。

 同社の能力開発は、OJT と OFFJT をバランスよく組み合わせ、「技術力の向上」と「人間力の向上」に大きく焦点を当てている。そしてこれらが、新人、主任、リーダー、部長、執行役員と階層ごとにステップアップしながら続く仕組みになっている。

匠道場で技を後輩たちに伝授

 「技術力の向上」で重要な役割を果たしているのが、「ものづくり学校 匠道場」。

 工場内に、「機械道場」「溶接道場」「組立道場」と名づけた小さなスペースを設置し、そこでそれぞれの技能における “マイスター” を指導役に、実作業を通して新人研修から匠の技の伝承までを行っている。

 ここで技能が認められた社員は、各種国家検定や関連取引会社主催の技能検定にチャレンジでき、合否や成果は道場の告知コーナーに張り出される。

 また、ここで新人の製作物と匠の領域に入った社員の制作物を並べて展示することで、その技能の差が歴然と分かり、若手の啓発を促す仕組みにもなっている。こうした仕掛けによって、次代を担うマイスターを養成しているのである。