(2010年2月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ギリシャの首都アテネの金融街。数週間前この一角で、独特な雰囲気を漂わせた一行が目撃された。米国ヘッジファンド業界の大物ジョン・ポールソン氏が率いる投資グループの代表団をゴールドマン・サックスの社員たちがエスコートし、ギリシャ政府の高官やアナリストたちに引き合わせていたのだ。
ゴールドマンのような投資銀行が資産運用会社の顧客の現地視察に同行することは珍しくない。また、不良資産への投資で過去2年間に巨額の利益を計上したポールソン氏のグループのようなヘッジファンドは、大事なお得意さまと見なされている。
疑惑の目を向けられる投資銀行とヘッジファンド
ギリシャの危機が深刻化する中、各国政府関係者は投資銀行などが果たした役割に懸念を抱くようになった(写真はアテネの議会前で緊縮財政計画に盛り込まれた公務員の賃金凍結に抗議する人々)〔AFPBB News〕
しかし、アテネに対する視線が厳しくなっているこの時期だけに、ほかの欧州諸国の首都では彼らの会合について突拍子もない噂が飛び交うことになった。
「彼らは一体何をやっていたのかと訝る向きは少なくない。タイミングが悪く、そう見られても仕方がない」。ある欧州系大手銀行の会長はこう語る。
ギリシャの財政危機がここ数週間で深刻化するにつれ、ギリシャやほかの欧州諸国の政府幹部は懸念を強めている。怒りを露わにしないまでも、欧米の投資銀行やヘッジファンドが担ってきた役割に困惑しているのである。
理由の一端は、ヘッジファンドなどがクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)をはじめとするデリバティブ(金融派生商品)を用いてユーロの下落に賭けたり、特にギリシャなど、経済的な意味でユーロ圏の「周縁」にあるとされる国々の債券を売ったりしていると認識されていることにある。
しかし、話はそこで終わらない。ゴールドマンを筆頭とするウォール街の大手投資銀行がギリシャを含むユーロ圏諸国の債務関連統計の操作に長らく手を貸してきたこと、そしてその際に覆い隠された公的債務問題の一部が今になって国際金融市場を悩ませ始めたことも、懸念の要因になっている。
米国のサブプライム危機と似た銀行批判
こうした状況はいくつかの点で、2007年に米国で始まったサブプライム危機を巡って人々が怒った時の様子に似ている。この時は、貸し倒れになるリスクの高い住宅ローンを大手投資銀行が束ねて投資家に売りさばき、金融のシステミックリスクを増大させたという非難の声が沸き起こった。
導入されて11年になる単一通貨ユーロは、かつてない厳しい状況に直面している。ギリシャは2001年にユーロを導入し、現在では16カ国がユーロ圏に加盟しているが、加盟国が発行する国債は対等に扱われるという導入時の大原則を貫けるか否かが、市場で試されているからだ。
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