(2010年2月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
筆者は先日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が、ロシア政府が計画する欧州安全保障の新構想の利点について説明するのを聞いた。残念なことに、ロシア外相は説得力に欠けていた。
ラブロフ外相が相互信頼と共通の安全保障に基づく政治を伝道しているのを聞くことは、米国のディック・チェイニー前副大統領が多国間主義の絶対的な美徳について説教する姿を思い浮かべるに等しい。
ロシアが打ち出した新たな欧州安保構想
ロシアのラブロフ外相が相互信頼と共通の安全保障を説くのは、米国のチェイニー前副大統領が多国間主義の美徳を説くようなもの・・・〔AFPBB News〕
チェイニー前副大統領のように、ラブロフ外相も柔らかな語り口と大言壮語を同時に実現するような話し方をする。西側諸国の多くの罪とロシアの利他主義的な意図について語るラブロフ外相の演説は――直近のスピーチは毎年開かれるミュンヘン安全保障会議で先日行われた――、詭弁の見本である。
欧州安全保障協力機構(OSCE)に再び活気を与える条約に関してロシアが行っている提案の中身は、真剣な検討に値する。
冷戦時代に極めて重要な東西対話の場となったOSCEは、その後、影が薄れてしまった。OSCEには、誤解に反論し、旧ソ連ブロックの緊張を和らげるうえでもっと重要な役割を与えられてもいいというロシア政府の主張は正しい。
ヒラリー・クリントン米国務長官が最近パリのスピーチで述べた通り、西側諸国は、欧州の安全保障が不可分のものであるというロシアの見解に異論はないはずだ。ある国が別の国を犠牲にして自国の安全保障を追求することは、確かに不安定を生み出すレシピだ。何世紀にもわたる欧州内の戦争は、我々にそのことを教えてくれたはずである。
ところで、クリントン国務長官が大西洋同盟の将来に関する米国政府の見解を述べる場所としてパリを選んだのは、米国が台頭する中国にこだわるあまり、欧州を見捨てようとしているのではないかという一部欧州諸国のヒステリックな不安に対する解毒剤の役目を果たすことを意図したものだ。
米国は欧州を見捨てようとしている?
バラク・オバマ米大統領は、前例がないほど冷やかな無関心さで欧州を見ていると言っても差し支えないように思える。オバマ大統領は、欧米関係に関する外交上の儀礼には興味を感じていないように見える。フランスのニコラ・サルコジ大統領は、極めて遺憾なことに、オバマ大統領のホワイトハウスへの招待状を1年以上待たなければならなかった(今は郵送中)。
数カ月以内に英国の首相になることを望んでいるデビッド・キャメロン保守党党首は、選挙前にオバマ大統領に謁見するという望みを諦めなければならなかった。だが、これらはどれも、米国が北大西洋条約機構(NATO)に見切りをつけようとしていることを意味するものではない――とにかく今はまだ。
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