自分の宝探しで島に来る
山内道雄町長は、町の活性化のためには「若者、よそ者、馬鹿者」の力が必要と説き、岩本さんや、阿部さんらIターン者に大きな期待を懸けている。
海士町の山内道雄町長「彼らは『自分たちは宝探しに来た』という。一流大学や大企業にいたのにもう一つ上のステージを求めて島に来た。そこで自由自在にやらせているところが一番いいのではないか」と考えている。
他の自治体と比べ、定住促進事業に「特に金をかけているわけではない」(町長)という。それでも若者が集まる理由は、結局のところ山内町長をはじめ役場の職員や島民が持つ「島の自立」に懸ける意気込みと誠実な人柄、面倒見のよさだろう。
阿部さんが初めて島を訪れた時、役場の職員が3日間、付きっきりで島内を案内してくれた。夜の飲み会では、島の魅力や抱える課題などを熱く語るのを聞いた。
また、滞在中、子どもから高齢者までが集まる会合に参加する機会があった。その時に、「どのようにしたら島はよくなるのか」──老いも、若きもが率直に自分の意見をぶつけ合うのを聴いているうちに、「単なる旅行者の自分をここまでもてなし、本音を語ってくれた。一緒に何かをやってみたい」と考えたのがIターンのきっかけになったという。
初めて訪問した時に感じた漠然とした思いはどんどんと強まり、1年後に移住するまで揺らぐことはなかった。
東京への一極集中と地方の過疎、少子高齢化がとまらない現在、地方の自治体にとってUターン・Iターンをはじめとする定住対策は重要な施策の1つと言える。
しかし、多くの自治体が都内で開催する定住フェアは、「ホールを1日か2日借りて開催する」「地元の市町村や企業による就職相談コーナーを開設」「有識者や専門家、経験者を招いた講演会や座談会」「伝統芸能を紹介したり特産品の販売コーナーを設けたりしてPR」といった、お決まりパターンに終始する。
予算消化が目的ではないかと言うと酷かもしれないが、こうしたイベントが地域に有為の人材を呼び込むのにどれだけの効果が期待できるだろうか。
岩本さんたちのように、地域で自らの理想実現に燃える若者が地方を見る目は厳しい。
地域に有為の人材を呼び込もうと考えている自治体関係者に求められるのは、自らの地域が持つ魅力や課題、将来像などについてUターン・Iターンを考えている人たちに丁寧に説明し、とことん語り合う姿勢ではなかろうか。特に多額な予算が必要なわけではない。海士町の取り組みがそれを示している。
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