(2011年10月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
タイ・バンコク北部のパトンタニ県で、洪水のため路上に取り残された車列〔AFPBB News〕
タイ国内のかなりの地域が冠水している。3月には、日本の沿岸部が過去1000年間で最悪の破壊的な津波に襲われた。両国の災害は何をおいても、人類の悲劇だ。タイでは既に、少なくとも366人が亡くなった。日本では、死者・行方不明者が約2万人に上っている。
だが、こうした大災害は人の命のはかなさとともに、もっと散文的なものも明らかにした。グローバルなサプライチェーン(供給網)の脆さと驚くほどの複雑さだ。
今週、マツダとトヨタ自動車、東芝が浸水したタイ工場の生産停止を延長し、同じ状況にある国際企業(大半が日本企業)の長いリストに加わった。ホンダでは、世界生産台数の5%に当たる年間25万台近い車を生産しているタイの組立工場が、10月4日以来、閉鎖されている。
混乱は単純な組み立て作業を大きく超えて広がっている。異様に複雑なアジアのサプライチェーンは、最終的に店頭に並ぶまでに原材料が何度も国境を越えることを意味しているからだ。
異様に複雑なアジアのサプライチェーン
安宿街と貿易の中心地を兼ねる香港の重慶大厦について書いたゴードン・マシューズ氏の著書『Ghetto at the Center of the World(世界の中心地のスラム街)』の中に、示唆に富む話がある。
低価格製品のグローバル化を示す一例では、オーストラリアのオパールが重慶大厦経由で中国南部に出荷され、そこで磨き上げられた後にオーストラリアに送り返され、中国人観光客向けに販売されるという。
オパールほど単純なものがこれほど遠回りの旅をするのであれば、高性能の電子機器がどうなっているのか考えてみるといい。
「iPad(アイパッド)」や「iPhone(アイフォーン)」といった米アップル製品は、台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)が所有する中国南部の工場で生産されている。だが、ピカピカの機器の内部には、日本や台湾、韓国、米国、欧州で生産された部品が数十個も詰め込まれている。これらの部品は狂った渡り鳥のように世界中に飛んでいくのだ。
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