(2010年2月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
今年1月、トヨタ自動車がいくつかの車種のリコール(回収・無償修理)について発表した時、最初の公式声明の1つは、マスクを着けてテレビカメラの前に現れた日本人役員によって行われた。日本では、風邪の季節にマスクを着けるのは珍しくない。だが、危機管理の専門家はこの映像を、危機の際に顧客とのコミュニケーションの面で不手際を犯した企業を象徴する例として捉えている。
リコールの技術的対応についてトヨタを非難する人は誰もいないが、ほとんどの人は、トヨタが顧客を相手にどう語りかけたかについては、中くらいの点数をつけるのが関の山だ。
「家族の友人から赤の他人になったトヨタ」
信頼性の上に評判を築いてきたトヨタだけに、大規模リコールの打撃は大きい〔AFPBB News〕
中には、顧客への対応がお粗末であり、信頼性の上に評判を築いてきたトヨタにとって高くつく可能性があると言う人もいる。危機管理PRコンサルティング会社ボルハウス・コミュニケーションズの創業者兼CEO(最高経営責任者)、ロビー・ボルハウス氏は、「トヨタは家族の友人から赤の他人になった」と言う。
欧州と米国では、トヨタがアクセルペダルに不具合がある車数百万台をリコールする計画を正式に発表してから、一般の人々にその詳細を伝えるまでに数日間の遅れがあった。その間、トヨタの豊田章男社長が公衆の目に触れることはほとんどなかった。
また今回の危機では、現地事務所の役員たちが、自分たちが何を話せるのか、何を話せないのかについてトヨタ本社からの指示を待つ姿が見られ、トヨタの巨大な組織内のコミュニケーションのあり方が垣間見えることにもなった。
欠陥製品にまつわる過去の危機では、問題に対する企業責任の事実関係がどのようなものであれ、消費者へのメッセージで不手際を犯せば自らの立場を危うくした。
世界最大の自動車メーカーであるトヨタにとって今回の問題は極めて重要だ。危機管理コンサルティング会社デゼンホール・リソーシズのCEOで、『ダメージコントロール』の著者でもあるエリック・デゼンホール氏は今週、トヨタの問題を「現代で最大の消費者危機管理物語」と呼んだ。
姿を現さない豊田社長
米フォード・モーターが2001年に死亡事故につながった「エクスプローラー」の「横転」問題に直面した時は、当時CEOだったジャック・ナッサー氏がこの問題について語る全米テレビ広告に登場した。
今回、豊田氏は、先週ダボスで行われた世界経済フォーラム(WEF)年次総会でNHKに短いコメントを出した以外は、公には何も言及していない。
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