日産自動車が2007年の東京モーターショーに出展した電気自動車のコンセプトカー。本格的なEVの時代には、従来にない新しいスタイリングのクルマが登場するはずだ

 石油資源の枯渇や、地球温暖化問題が深刻化する中、ハイブリッド車(HEV)に続く次世代環境対応車として、電気自動車(EV)に熱い視線が注がれている。公道を使った実証試験や、普及を目指した自動車メーカーと自治体の協定締結などのニュースが連日のように伝えられ、早くもブームの様相を呈してきた。

 しかし、実際にEVを普及させるためには、充電インフラの整備、バッテリーの性能・コストの大幅な改善をはじめ解決すべき難題が山積している。今のところは、単に、排ガスや二酸化炭素(CO2)を全く排出しないというクリーンなイメージが先行して、もてはやされているだけで、ガソリン車やディーゼル車に取って代わるだけの力量はない。

 自動車の開発、マーケティングに携わるベテランたちからは「20~30年後ですら世界的なEV普及率が10%に達するかどうかは疑わしい」といった声が聞こえてくる。

 冷静に考えれば、今の時点でEV関連事業を具体的に展開していない自動車メーカーや部品メーカー(サプライヤー)に未来がなくなったということは全くないのだ。

技術に自信を持つ企業ほどEVブームに冷静

 例えば日系自動車メーカーではトヨタ自動車、ホンダ、グローバル・サプライヤーならばデンソー、ロバート・ボッシュのように高い技術力を持つトップランナーたちは、EVブームに対して極めて冷静だ。

トヨタ、新型プリウスを発表 北米国際自動車ショー
ホンダのハイブリッド車、新型「インサイト」1万台受注

ハイブリッド車(HEV)は、日本の市場の中で確固たる地位を築いた(上=トヨタ・新型プリウス 下=ホンダ・インサイト)〔AFPBB News

 もちろん、これらの企業も、EV分野にも多額の研究開発費を投じて、着々と準備は進めている。しかし、社運を懸けるほどに浮足立っているわけではない。それはEVが自動車の主流になると判断するには時期尚早であり、ほかにも注力すべき技術テーマを持っているという意識の裏返しである。

 ところが、2番手以降のメーカーやサプライヤーには、「EVというジャンルに立ち向かう方針を決めなければならない時期に差し掛かっている」という焦りにも似たムードが強まっている。

 2009年の日本のベストセラーカーはHEVの先駆者であるトヨタの「プリウス」だった。政府のエコカー減税、エコカー補助金の後押しを受け、前年比2.8倍の20万8876台を売り上げた。低価格HEVという新分野を切り開いたホンダの「インサイト」も4月発売ながら8位に食い込んだ。HEVは「環境意識の高い人が乗る特別なクルマ」から、誰もが普通に選ぶ、普通のクルマになったのだ。