日本語と韓国語は特に漢字語できわめて共通点が多い。しかし韓国語には日本語の「勉強」という語彙がなく、「工夫(コンブ)」を使う。ちなみに中国には「勉強」という語彙はあっても、その意味では「学習」が使われる。ニュアンスが異なり、それぞれの国の勉学へのスタンスが表れているようで興味深い。

軍隊から証券取引所まで、韓国全土で「大学入試シフト」

日本のセンター試験にあたる大学修学能力試験を受ける先輩たちを応援する中学生(ソウル)〔AFPBB News

 毎年11月になると韓国の大学入学試験の様子が風物詩のように日本のテレビでも紹介される。試験開始時間に遅れそうになった受験生のために白バイやパトカーが動員され、会場まで運ばれる。父母は受験会場の外で息子や娘の合格を祈り、水飴(「くっつく」という単語が、「合格する」という意味を持つため)を志望校の校門に貼り付ける。

 日本の受験戦争も厳しいが、お隣の国のすさまじさはその比ではない。似ているようでやはり何かが違う韓国の教育熱を少しのぞいてみよう。

良い教育を受けさせられない親は「罪人」?

 「鉄道ストで列車が止まったその日、ある高校生の夢も終わった」――。2009年12月の韓国紙・中央日報の記事の見出しだ。韓国の最難関大学である国立ソウル大の面接試験を受ける予定だった男子高校生がストのあおりで列車が遅れたため、試験開始時間に間に合わず、不合格になったという内容だ。同紙はこのニュースを1面トップで報じ、テレビなど他のメディアも追随した。

 記事では、高校生の家庭が裕福ではないこと、市の奨学金をもらうためソウル大進学を目指したことが紹介される。高校生が通う学校の校長は「面接さえ受ければ合格間違いなしだった」と訴え、ストを決行した鉄道労組に損害賠償請求をしなければならないと憤慨。

軍隊から証券取引所まで、韓国全土で「大学入試シフト」

試験開始前、祈るような気持ちで・・・(ソウルの受験生)〔AFPBB News

 高校生の両親は「他の家庭では自家用車で(試験会場まで)送っていくのに、家計が苦しいせいで一人で鉄道で行かせてしまった。駄目な親が罪人だ」とまで嘆く。

 韓国で受験は国家の一大事と言ってもよい。だから日本人が見ると大げさなまでに騒ぎは大きくなる。大学進学率は8割を超えて世界一で、いかに良い大学を卒業するかは当然一生を左右する。格差社会の中で下層階級から抜け出し、上昇するには勉強で学歴を得る以外ほとんど方法はない。学歴信仰が強く、韓流スターでさえ大学進学を目指す。