2010年がスタートした。新しい年はロシアにとってどのような年になるのか。ロシアでは相変わらず悲観的な見方が広がっている。というのも、ロシアにとって2009年の難問がほとんど解決されず、年越しとなったからである。

 あるメディアは「2009年はまったく予想外れの1年だった」と振り返る。「国内産業の後退は予想より深刻だった。一方で失業率とインフレは予想よりひどくなかった」

 2009年、ロシアのGDP成長率は-8.7~-9.0%になりそうだ。BRICsの中では、中国の8.4%、インドの6.5%、ブラジルの-0.3%(いずれも世界銀行の予測)と比べたら最低である。

 失業率やインフレは予想外に低かったが、あまり喜べるものでもない。アフトワズ(ロシアの大手自動車メーカー)のように経営危機に陥った企業を救出するために、政府は巨額の資金を投入し、失業を抑えた。だが、経営は相変わらず危機的な状況で、結果的には浪費だった。インフレが抑えられたのも、要は消費の低迷のためである。政策のおかげだと考えてはいけない。

 また2009年は、エネルギー資源への依存が高すぎるロシア経済の病理が、ますます浮き彫りになった。2009年末にロシアの原油価格は1バレル40ドルを切るまでに値下がりし、ロシアへの投資が急速に流出し始めた。

 ロシア中央政府は、ルーブルの暴落を阻止し、軟着陸させるため、2008年8月から2000億ドルを使っていた。1990年代後半の経済危機の時に安いルーブルはロシア企業の生産増加を刺激したが、今回はその効果はなかった。

 2009年度第1四半期と第2四半期の工業生産指数は-14.3%と-15.4%。軒並み2ケタ減の暴落だった。特に大きな損を被ったのは製鉄、建設、機械産業だった。

 株価市場(RTS)の被害は著しく、2008年5月から2009年6月にかけて、時価総額は40%弱減少した。内外需要と設備投資の大幅な減少がその背景にあった(設備投資は2009年度第1四半期が-15.6%、と第2四半期が-21.0%)。2008年1月~2009年9月の資本収支(対内・対外投資収支)はマイナス1600億ドルに達していた。

ロシア経済に復活の兆しが見えてきたが・・・

 銀行の貸し渋りも激しかった。ロシア銀行の貸出残高は2009年1月時点で12兆5090億ルーブルだった。同年9月には12兆6560億ルーブルと、ほんのわずかしか増えなかった。

 夏の初め、プーチン首相は、政府所有株の多い大手銀行の頭取と話をし、「4000億~5000億ルーブルを企業に融資できないのならば、夏休みは取らない方がいい」とプレッシャーをかけた。にもかかわらず、銀行は首相の威嚇より不良債権の方が怖くて貸し出しを抑えていた。

 格付け機関のムーディーズによればロシア銀行の不良債権は20%に達するという。また、フィッチレーティングスとスタンダード&プアーズは、40%にも達すると見ている。ロシアには、金融市場を含めて経済は崩壊寸前という悲観的なムードが広がっていた。