このコラムの連載が始まったのはちょうど2年前。始まって間もない頃のテーマとして取り上げたのが「学生フォーミュラ」だった。今年(2011年)も9月初旬、5日間にわたって、年に1回の「全日本学生フォーミュラ大会」が開催された。

 そして私自身は、2年前よりずいぶん「深入り」している。今年の大会では、メディア&パブリックリレーションズのお手伝いをしつつ、学生諸君が作り上げたマシンを自ら走らせる「動的審査」の場内実況を担当。マイクを握ってそれぞれのマシンとチームの走りの状況を伝えつつ、あれこれ解説を加えること2日半、さすがに喉が疲れました(笑)。

 ここで改めて「学生フォーミュラ」について簡単に説明しておこう。

企業のレース参戦にも匹敵する人材育成の環境

 大学および大学院、短期大学、自動車専門校の学生諸君が、自分たち自身で構想したフォーミュラカー、つまり4輪が露出した競技専用車両を1年間かけて設計、製作する。

2011年・第9回全日本学生フォーミュラ大会の参加車両とチームメンバーたち。前列中央、カーナンバー2、赤いボディの上智大学チームが数点の僅差で 横浜国立大学チームを上回って総合優勝を獲得した。近来にない接戦であり、表彰式での上智大学チームの歓喜と2位以下のチームの脱力、そして勝者への祝福は、直接の関係者でなくても目が熱くなる思いを味わうものだった。同時に、上位を競うチームだけでなく精いっぱいの思いと実力でここに自分たちのマシンを並べたチームもまた、学生フォーミュラの基本精神を体現する若者たちなのである。(写真提供:自動車技術会)
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 この車両は「休日にサーキットなどで競技スポーツとして自動車の運転を楽しむ人々に向けて少量を製造し販売するためのプロトタイプ」というシナリオが設定されている。それに基づいてまずマシンをデザイン(設計)し、作り上げ、素材から加工、組み立てのために想定されるコストを算出し、それぞれのリポートを提出しなければならない。

 それを元にまず「静的審査(スタティックイベント)」が行われる。つまり、まず「デザイン」について、専門家がリポートを確認した上で現車を前に学生たちの発表を聞き、具体的な内容について質疑、それを集約したところで講評が加えられる。

 「(想定)コスト」についても同様な審査がある。さらに「企業に対してこのプロトタイプを『量産』する事業を提案する」というシナリオに基づく「プレゼンテーション」というイベント(口頭試問による審査)も加わる。

 その上で初めて「自分たちが作ったマシンを、自分たち自身で走らせる」という「動的審査(ダイナミックイベント)」に進む。

 まずは安全に走行できるかを確認する「車両検査」を受け、問題のある部分は修正した上で、「発進加速」「円旋回」といった基本的な性能の確認、そして曲がりくねったコースをできるだけ速く走る「オートクロス」(日本のモータースポーツのジャンルに当てはめれば「ジムカーナ」に近い)、さらに同様のコースをドライバー2人が途中で交代して20キロメートル、20~30分ほど走り続ける「エンデュランス(耐久走行)」では、トータルの走行時間と燃料消費の両方が採点対象になる。