2011年10月4日。韓国の連休明けの証券・外国為替市場は大荒れの幕開けとなった。取引開始直後に総合株価指数が5%急落し、今年4回目の一時取引停止になった。

 ウォンの対ドルレートも急落した。韓国メディアが先週まで「マジノ線」と評していた1ドル=1200ウォンの水準をあっさり割り込んだ。1ドル=1200ウォンよりもウォン安になったのは、2010年7月末以来のことだ。

 韓国では、2008年のリーマン・ショック直後にも、ウォンや株価の暴落が起きており、「今回もまたか」という懸念が強まっている。一方で、韓国政府は「2008年とは状況がまったく異なる」と危機説の打ち消しに必死だ。経済界でも「通貨危機など起こらない」という声がまだ大勢だが、気になる兆候もあちこちで見え始めた。

危機説を打ち消す大統領演説の翌日に市場が急落

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李明博大統領は「状況は2008年とまったく異なる」と主張するが・・・〔AFPBB News

 10月4日のマーケットの動向は、李明博(イ・ミョンバク)大統領にとって何とも皮肉な展開となってしまった。前日は韓国の神話に基ずく建国記念日の休日。この朝に、大統領は週初恒例のラジオ演説で「経済危機」を強く打ち消したばかりだったからだ。

 そのタイトルは「再び危機がやって来たが、克服できる」。

 欧州の財政危機を機に、韓国でもウォンや株価が急落し、一部で「韓国は通貨危機に陥るのではないか」という見方が急浮上しているのに対して、全面反論した演説だった。

 李大統領は「今回の経済危機は2008年のグローバル金融危機に比べて解決が簡単ではなく、回復までに相当の時間がかかりそうだ」と認めたうえで、「韓国は前回の金融危機を世界で最も早く成功裏に克服した。我々の経済は今、国民が自信を持っていいほど堅固である」と語った。

 その根拠として、(1)国内総生産(GDP)に対する国家債務比率が33%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の98%を大幅に下回り財政が健全である、(2)外貨保有高が3年間で20%増加して3000億ドルを超えた、(3)短期外債比率も下がった、(4)経常収支黒字を維持している、(5)新興諸国への輸出依存度が2001年の51%から73%に急増した――などを列挙してまくし立てた。